「快活CLUB」「FiT24」「アニヴェルセル」も…AOKIが「スーツの会社」なのに異業態を次々と成功させられた"3つの要因"
ビジネスウェアの多様化、自由化といった時代の波を捉え、「スーツを仕立てる技術と品質」は維持しつつ、レディースやカジュアルを組み合わせた着回し提案を強化していく戦略だ。
しかし、この大きな変化が形になるまでには相応の時間を要する。そこで重要になるのが、事業ごとの役割分担である。
「4:3:3の体制に移行し、ファッション事業が再び大きな成長軌道に乗るまでには時間がかかります。その間、グループ全体の成長を牽引するのが、快活CLUBを中心としたエンターテイメント事業なのです」(田村社長)
AOKI-HDには、ファッション事業の他、エンターテイメント事業、アニヴェルセル・ブライダル事業と、大きく3つの事業の柱を持つ。
こうした多角化は、リスク分散の域に留まらない。時代の変化に応じて、グループ内の「力の入れ具合」を柔軟に調整できることにメリットがある。
「時代によって、どの事業が中心になるかは変わります。重要なのは、時間軸を見ながら、収益の柱を柔軟に変えていくことですね」(田村社長)
かつてはファッションが稼いだ利益でエンタメを育てた。そして今、成熟した快活CLUBが、次なる「深化」や「新たな探索」のための資金を供給している。この事業間でタスキを繋いでいく仕組みが、同社のしなやかな持久力を生んでいる。
もちろん、短期的な利益率を求める投資家からは「非効率」に見える時期もあるだろう。しかし、次の柱を育てるには時間がかかる。既存事業が安定しているうちに挑戦し、ダメだと思ったら早く撤退する。この「あくなき探索」の繰り返しが、10年後のAOKI-HDを支える道なのだ。
一人の力技から、組織の規律へ
守成(しゅせい)は創業より難し。これは中国の古典『貞観政要』にある言葉だ。事業をおこすことよりも、それを維持し、時代に合わせて進化させ続けることの難しさを説いている。
「両利きの経営」という理想を掲げながら、多くの企業がその途上で立ち往生してしまうのはなぜか。それは、既存事業の成功を振り切り、未知の領域へ踏み出すリスクを組織が許容しきれないからなのではないだろうか。
同社が最も重視するのが「リスクを組織で引き受ける度量」だ。
店舗で重大なトラブルが起きれば、現場に責任を押しつけるのではなく、グループの母体が即座に専門チームを立ち上げ、全責任を引き受ける。背後に盤石の布陣があるからこそ、現場は安心して新しい挑戦に背中を預けることができる。
かつてはトップの先見の明とバイタリティが道を切り開いた時代もあった。しかし今AOKIグループが体現しているのは、個人の「力技」を、再現性のある組織の「規律」へと昇華させた成熟した姿である。
「当社では、1人で決めて走ることはありません。数字を分析しながら複数人の多様な経験や知見を生かして、グループ全体の成長をバックアップしていきたいと思います」(田村社長)
創業以来大切にしてきた「おもてなし」の精神を基盤に、組織の「規律」を盾に据える。
AOKIグループが歩む探索と深化の道のりは、時代の変化に即した最適解を導き出していくことだろう。
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