「暴政株式会社」が破壊するアメリカの自由と民主主義 資産なき人びとの「絶望死」と「それでも」トランプが支持される深層
投資ファンドによって利益回収の標的にされ、アメリカの自由と民主主義を破壊する結果をもたらしている典型は新聞業界である。
かつてアメリカの都市では保守・リベラルの2紙以上が競い合うのが普通で民主主義の基盤となっていたが、いまや2紙以上が競う都市はわずか1.4%、20都市だけという(161ページ)。
インターネットの興隆が大きな背景だが、新聞業界の衰退ぶりは炭鉱以上で、2000年以降だけでも雇用の6割が減少、2005年以降に2500紙が消えたという。
消え去る前に、投資ファンドにより買収・再編(合理化)・売却によって利益を生みだす道具とされる。スタッフの7割削減、自社ビルの売却、通信社記事で埋められる紙面……ジャーナリズムの弱体化の末に新聞が消滅した地域では、監視機能がなくなり地元政界に腐敗がはびこる。
「金融化」した世界で自由と民主主義が崩壊していくのである。「暴政株式会社」、金持ちによる普通の人びとの支配は旧共産圏の官僚支配にも通じる自由の破壊ではないだろうか。
トランプが「原因」ではなく「結果」であり、アメリカの失敗の表象であるということが分かっていただけると思う。アマーリが本書で描きだすアメリカ自由主義と資本主義の姿は、今日の日本にもあてはまらないか。とくと考えてみた方がよい。
「ポストリベラル」が提唱する大改革
以上述べてきたような論点を含む本書は、トランプ時代に現れた新しい保守派である「ニューライト(新右派)」の代表的論客の一人ソーラブ・アマーリ(1985〜)が2023年夏に上梓したTyranny, Inc: How Private Power Crushed American Liberty ─and What to Do About Itの全訳である。
ニューライトには多様な思想集団が加わっている。アマーリはそのうちの「ポストリベラル」という思想集団の論客とみられている。
「ポストリベラル」とその現代アメリカ思想地図における位置付けは拙著『それでもなぜ、トランプは支持されるのか─アメリカ地殻変動の思想史』(東洋経済新報社、2024年)第Ⅱ部を参照していただきたい。





















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