「暴政株式会社」が破壊するアメリカの自由と民主主義 資産なき人びとの「絶望死」と「それでも」トランプが支持される深層
「暴政株式会社」、すなわち金持ち階級による、共産主義にも劣らない、普通の人びとに対する強権支配=自由の制限のもう一つの根源的理由は、「金融経済」である。
トランプ政権の経済政策に影響力を持つ、新しい保守派の政策知識人オレン・キャスは、アメリカの抱える大きな問題として、経済の「金融化(financialization)」を挙げ、ウォール街との対決も辞さない構えを示してきた。
本書でもしばしば引用されるキャスの主宰するシンクタンク「アメリカン・コンパス」の報告書は次のように指摘する。
企業の買収や売却、合併や分割は「それ自体では価値ある活動ではない。何も投資せず、創造せず、構築せず、提供しない」。
それどころか、往々にして企業や雇用、地域社会を破壊する。にもかかわらず、そうした経済活動を行うヘッジファンドとプライベート・エクイティがアメリカ経済に占める割合は急拡大しており、この両者が管理する総資産は1976年には20億ドルだったのが、2019年には2.4兆ドルにまで増加した、という。
ヘッジファンドなどは企業の買収・再編・売却の過程で利益を上げることを狙うわけだが、本書がとりわけ問題として論じているのは、公的サービスの民営化と地方の新聞経営に絡んだ問題だ。
アメリカでは、特にリーマン危機による大不況後、地方自治体の予算逼迫から消防・救急サービスを民営化する動きが急だ。
だが、民営化は「公共サービスを奢侈財へ」変える。消防・救急が有料化され、中下層の人びとは利用を恐れるようになる。利用は金持ちに限られていくのだ。
建国の父たちはボランティア消防士だったが
そうした民営公共サービス企業も投資ファンドによって買収・再編・売却で利益を上げる対象にされるから、経費削減や人員整理で職員は翻弄される。
サービスの質が低下するどころか、低賃金に苦しむ消防士や救急隊員による窃盗まで誘発する。ベンジャミン・フランクリンら建国の父祖の多くがボランティア消防士でもあったアメリカの良き伝統は消えつつある。





















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