「暴政株式会社」が破壊するアメリカの自由と民主主義 資産なき人びとの「絶望死」と「それでも」トランプが支持される深層

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極めつきは、「絶望死」だ。

アメリカでは中年白人男性の死亡率が上がっていることが分かった。原因は自殺や麻薬中毒だ。他の先進国では見られない異様な現象だった。

のちに中年白人に限らず、低学歴層全般に見られる現象だと分かってきた。トランプ支持者が多い地域で絶望死が多いことも見えてきた。

「暴政株式会社」による私的支配の正体

これを「暴政」と言わずして、何と呼んだらいいのか。

本書がつぶさに描きだすのは、筆者が10年前に気付かされ、訴えてきたことを多方面で裏付けるさまざまな事実と、その奥底の意味である。

著者は言う。今は資産所有者(金持ち)が財力と国家権力を駆使し、「資産なき人びとを支配」する状態になっている。そうした支配が、オバマ政権という民主党の「進歩的」といわれた政治の下で暴走していた。

ただ、この暴走は1970年代末以来続いてきた「民営化」、つまりネオリベラリズムによる経済運営の帰結なのである。

冷戦期、共産主義と対峙していた時代には、自由とは威圧的な政府の力から逃れることだと思わされていた。国家の統治機構が傍若無人にわれわれの私的領域の自由と権利を圧迫し、害するのを防がなければならない、と。

だが、共産圏が自壊して冷戦が終わり、世界中で自由が政府の強制を逃れて花開き、強制のない民主的世界で暮らせるようになったはずだと思ったら、それどころか自由は別の支配と強制にさらされているのだ。

それは、「傍若無人な市場の力がわれわれの権利と自由を害するおそれがあること、さらには私的暴政や私的暴君が実在するということ」(本書20ページ)なのである。政府権力による人びとの支配ではない。

あけすけに言えば、金持ちによる資産なき普通の人たちに対する支配なのだ。著者は、それを統治機構(政府権力)による「暴政」と区別して、私企業によるから「暴政株式会社(Tyranny, Inc.)」と呼んでいる。私的暴政なのだ。金持ちたちは政府をも動かし、人びとの支配のために用いる。

では、その実態はどんなものか。具体的事例に即して描き出されていく。

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