「スープは美味しいけど麺が残念」とネットに書き込まれたが…人気ラーメン店主が明かす「嬉しかった客の言葉」が泣けた

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ところが、しばらくしてその男性が突然涙を流し始めた。

体調が悪いのではないかと心配になり、柴田さんの妻・輝子さんが声をかけた。すると男性は、ゆっくりとこう話した。

「実は私、妙高高原の出身なんです」

幼い頃、両親に連れられてよく食べていたラーメンがあった。それが柴田さんの修業先でもある「ミサ」のラーメンだったという。ラーメンを食べた瞬間、亡くなった両親と一緒に食べた記憶が一気に蘇ってきたのだ。

「雪ぐに」店主の柴田雅大さん
「雪ぐに」店主の柴田雅大さん(写真:筆者撮影)

ただ、ここで1つ不思議なことがあった。その男性は、柴田さんが「ミサ」出身だということを知らなかった。つまり先入観なしに食べていたにもかかわらず、心の奥に眠っていた記憶が呼び起こされたのだ。

「うちのラーメンは、もうミサの味とはだいぶ違うんです」と柴田さんは言う。それでも、香りや湯気、味わいが五感を刺激し、昔の思い出を呼び覚ましたのかもしれない。

食べ終えた男性は、店を出るときに静かに言った。

「本当にありがとうございました。これからも頑張ってね」

その言葉を聞いたとき、妻・輝子さんも涙を流した。ラーメンが人生の記憶に寄り添う料理であることを、改めて実感した瞬間だった。

ラーメン
(写真:筆者撮影)

カウンターでは今日も人生に残る瞬間が生まれる

ラーメンは、数分で食べ終わる料理だ。だが、その短い時間の中で、人生に残る瞬間が生まれることがある。

迷いを救ってくれる言葉。

思わず叫ぶほどの美味しさ。

親子で受け継がれる思い出。

亡き家族を思い出して流れる涙。

ネットニュースにはなりにくいが、ラーメン店のカウンターでは、そんな物語が毎日のように生まれている。どんぶり一杯を通して交わされる言葉が、今日もまた誰かの背中を押している。

【もっと読む】「2000円、3000円のラーメンを作りたいと思ったことはない」…ラーメン界のカリスマが始動、1杯790円でも儲かる「古き良きラーメン店」の秘訣では、ラーメン界のカリスマが東京・平井で始動させた「ラーメン ねぎとん」の裏側を、ラーメンライターの井手隊長が取材、詳しくお伝えしている。
井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。東洋経済オンラインアワード2024にて「ソーシャルインパクト賞」を受賞。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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