82歳父「うるさい! もう帰れ!」→追突事故を起こしても免許返納せず…行動経済学的に「運転をしない」環境をつくる方法

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それを踏まえ、最初にやるべきは「H夫さんの目の前にはいつもマイカーがある」という状況を変えることです(逆アクセスナッジ)。

本来、この状況を変えるベストタイミングは、事故の直後でした。

Gさんはそのベストタイミングを逃した感はありますが、今からでも間に合います。Gさんが「車から変な音がする。これ、修理が終わってないみたいだし、悪いところを全部見てもらおう」と理由を明確に示した(理由ナッジ)うえで、「代車よりもタクシーのほうが安いので、しばらくはタクシーを使ってね」と代替手段を示すこと(置き換えナッジ)で、H夫さんはタクシー生活を受け入れやすくなります。

バイアスを逆手にとって、タクシー生活を「現状維持」にする

ただ、タクシーの利用には、大きな問題が生じます。それは、支払いのたびに「マイカーがあればこの料金を支払わなくて済むのに」という考えが浮かび、ストレスとなることです(損失回避バイアス)。

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冷静に考えると、マイカーの維持費のほうがタクシー料金より高いこともあるのですが、脳はタクシー代の出費を強い苦痛として受け止めます。するとH夫さんはストレスのあまり、安い軽自動車を衝動買いする可能性も出てきます。

このストレスを和らげるには、Gさんがタクシーアプリを一緒にダウンロードし、「クリックだけでタクシーが来てくれて便利だよ」と、目先の不便さを解消できると伝えることで解決できそうです(簡素化ナッジ)。

請求は月末にカードからの一括引き落としなので、その場で現金を払うのに比べてストレスを感じにくいものです。

タクシーを使う日常に慣れることで、マイカーへのこだわりが薄れていきます(現状維持バイアス)。そのうち、免許の更新時期がやって来て、H夫さんはうっかり更新を忘れてそのまま免許を失効することもあります。

竹林 正樹 ⻘森⼤学客員教授

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たけばやしまさき / Masaki Takebayashi

青森県出身。青森大学客員教授。立教大学経済学部、米国University of Phoenix大学大学院(Master of Business Administration)、青森県立保健大学大学院修了(博士〈健康科学〉)。行動経済学を用いて「頭ではわかっていても、行動できない人を動かすには?」をテーマにした研究を行い、「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ)をはじめ、各種メディアでナッジの魅力を発信。

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