「大切なのは、生まれじゃないの。心なの」 名店の味を継承…武蔵小山《人気焼肉屋》の"意外な誕生秘話" バングラデシュ出身店主の半生とは
取材中もバブさんとスタッフの若者、女性、そしてお客さんが親しげに言葉を交わしていて、店内にはとても和やかな空気が流れていた。
一般的な日本人にとって、飲食店で外国人のオーナー、若者もいれば高齢者もいるスタッフと一緒に楽しく話をする機会はそうそうない。焼肉のクオリティーに加えて、この雰囲気がお客さんを惹きつける強みになっていると感じた。
「今は幸せが大事」なバブさんの目標とは?
同じようお店があれば、ほかの地域でも人気が出るだろう。「お店を増やさないんですか?」と尋ねると、バブさんは首を横に振った。
「前みたいに頑張れば、ここよりいいところで大きなお店できるよ。もっとお店増やせる自信あります。でも、今は幸せが大事。娘がかわいいから、家が好き。娘が大きくなった時、私が元気だったらもう1つ(1店舗)だけ増やしたいです」
そのもう1店舗は、日本国内ではないかもしれない。バングラデシュには日本式の焼肉店がなく、バブさんは「日本より高くても流行る」と予想する。
ただ、現地でお店を開くとしたら、1年のうち少なくとも数カ月は日本を離れなくてはいけない。その時、自分がいない武蔵小山の店がどうなるのかという不安もあって、未来はまだ流動的だ。
1つだけ、明確な目標がある。
「バングラデシュには、大変な生活をしている人いっぱいいるよ。そういう人たちにご飯をあげたり、子どもたちが学校に行けるようにサポートしてあげたい。ポリティクス(政治)は嫌いだし、リーダーにはなりたくないけど、優しいことで有名になりたいです」
バブさんの両親はいつも温かく誠実で、人望が厚かった。彼はすでに亡くなってしまったふたりの背中を追っているのだろう。
インタビューの間、彼が何度「優しい」と口にしたのか数えてみると、20回もあった。もちろん、日本で差別を受けたりイヤな目に遭ったこともある。そういう時はグッと我慢をして堪えてきた。その経験があるからこそ、お店を開いてから出会ったお客さんたちの温かさを噛み締める。
「ビックリしました。信じられないです」
取材後、焼き肉を食べて会計を頼んだら、「これ、どうぞ!」とイチゴが載った皿を渡された。お客さんからの差し入れだ。その高級イチゴは、今年一番の甘さだった。
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