私は、著者が説く「一番悪いこと」をしてしまいました。損切りをしなかったこと、少し上がったらすぐ売ってしまったこと、「どんなときでも市場から歩み去ってはいけない」という鉄則を守れなかったこと。あれは本当によくなかったなと思います。
投資のプロが「手法」を語らない理由
ニューヨークでヘッジファンドに勤める運用のプロフェッショナルに、投資の秘訣を尋ねたことがあります。
当時の私は当然、「ドルコスト平均法」や「初心者は個別銘柄ではなくトピックス連動やS&P500連動で」などの“なんらかの具体的な手法”を聞けるものだと期待していました。
でも、彼が口を開いて語り始めたのは、意外にも手法の話ではなく「メンタルの話」だったのです。
その方は「新人のトレーダーが入ってきたときも90%メンタルの話。どのように自分自身を整えて投資に臨めばいいかという話をする」とおっしゃっていました。
「この値段になれば買う」「何%になったら損切りをする」などのルールを決めることは誰にでもできるけれど、それを着実に実行していくメンタルは多くの人にはありません。
私自身もそうです。私は、「損を確定すること」が怖い。
なぜかというと、「自分自身が無能であることを突きつけられること」が怖いからです。
そして、今損失を確定しても自分の日常生活に影響はないとわかっていてなお、その現実、つまり、自分の無能さに直面することを避けようとしてしまう。
『投資家の母』では、この「メンタル」について最初からはっきりと書いています。同書の中で、著者は「株式市場での心理学の役割はいくら強調してもしきれない。心理学は短期的、そして長期的には株式の90%を決定する」という伝説の投資家アンドレ・コストラニーの言葉を紹介しています。
投資の本といえば上昇局面や失敗局面でのテクニックを説くものが多い中で、これほどまでに「メンタル」を強調していることが、非常に印象的でした。母が娘に対して書いた本だから、投資という理性に司られている話を、感性から話し始めることができているのでしょう。




















