ある日突然「透析患者」に仕事一筋"50代男性"の悲鳴 「気分が悪い」とクリニックに→即入院→透析開始 心が追いつかず…

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事例2:透析拒否の先に待っていたのは……

当時70代だった男性は、私の勤務先の病院が変わるたびに遠方から通院し、何年にもわたって診察を受けていた患者さんです。「なんとか助けてほしい」と、口癖のように言っていたことを思い出します。最初の数年はまだ元気で、ダンスが生きがいだと話していました。

しかし一方で、「俺は“みなしごハッチ”なんだ」と寂しげでした。看護師だった妻には乳がんで先立たれ、息子さんも事故で亡くしたといいます。1970年代に『昆虫物語 みなしごハッチ』というテレビアニメがありましたが、独りぼっちになった現在の境遇を、ミツバチの主人公ハッチに重ね合わせていたのでしょう。いつも孤独な気持ちを抱えていたようでした。

在宅血液透析への挑戦

高尿酸血症が原因だと考えられる慢性腎臓病で、腎機能の指標となるクレアチニンはすでに高い数値を示していました。外来を受診するたびに病状が悪化しており、徐々に歩くこともつらくなっている様子でした。

しかし腎代替療法の話を切り出すと、「そんな話はしないでほしい」と聞く耳を持ちません。なんとか説得しようと試みたものの、話をしようとすると、診察室から出て行ってしまうのです。追いかけても、走って逃げてしまうほどでした。

その後、転院先の病院に入院したようでしたが、数週間が過ぎた頃、「息を引き取りました」という連絡が私のもとに届きました。

どうしてあのとき、透析治療を開始させることができなかったのか、もっとしっかり説得していれば……と悔やまれました。しかし、話を聞くのも嫌なほど拒絶していたことを考えると、彼自身の選択だったと思うしかありません。

在宅血液透析は、多くの患者さんに新たな可能性をもたらします。しかし実際の導入においては、学会のガイドラインだけでは判断しきれない複雑な状況に直面することもあります。

私のクリニックでは、そうした場合でも患者さんの希望を最優先に考え、柔軟な対応を心がけています。たとえば、同居者がいても介助を期待できない場合や、遠方に住んでいてフォローが難しいと思われるケースでも、患者さんの強い意志があれば、一緒に解決策を模索していきます。

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