ヴェイグの分析によれば、アメリカ、イギリス、フランス、インドそして日本の成長モデルは、政府支出と財政赤字が家計純利益を主とする民間部門純所得を押し上げるという「政府債務と支出モデル」である。「誰かの債務は、別の誰かの資産」であるから、政府の支出と財政赤字は、当然に、民間部門の資産を増やすのである。
ただし、アメリカなどでは、政府支出の大部分は家計に流れるが、日本では非金融企業に比較的多く流れるという違いはある。
これに対して、ドイツの成長モデルは貿易黒字主導の「純輸出モデル」である。ただし、ドイツの貿易黒字は、その貿易相手国に貿易赤字を計上させている。日本には、厳しい財政規律の下で成長してきたドイツを模範としたがる者が多いが、ドイツは政府の債務ではなく、貿易相手国の債務を増やすことで成長してきたに過ぎないのである。
だが、22年以降のウクライナ戦争によるエネルギー・コストの上昇や、輸出先の中国の経済停滞により、ドイツの「純輸出モデル」は破綻しかかっている。
さて、中国である。
ヴェイグによれば、中国の成長戦略は特異なものであった。中国は、企業部門の債務に異様なほど依存しているというのである。
なぜ、そのようなことが可能となったのか。それは、中国政府が、他の国々とは違って、国有企業のみならず、すべての企業や金融機関に対して、絶大な権限を振るうことができるからである。そして、中国政府は高資本戦略を採って、これら民間部門に膨大な投資を行わせた。その結果、過剰な生産能力を積み上げてしまったのである。
「責任ある積極財政」への批判
近年、インフレが問題となっているが、本書第6章のインフレの分析も、非常に重要である。
主流派経済学では、政府債務と支出がインフレを引き起こすとされている。インフレは、マネーの過剰供給がもたらす「貨幣現象」だというのである。
したがって、インフレ対策は、財政と金融の引き締め、すなわち政府支出の抑制と利上げだということになる。高市政権が掲げる「責任ある積極財政」に対する批判の多くも、インフレ期の積極財政はインフレをさらに加速させるというものである。





















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