より最近の例で言えば、日本成長戦略会議に参画している会田卓司氏は、クレディ・アグリコル証券のチーフエコノミストであるが、彼の経済解説は企業貯蓄率に着目して財政政策を論じるものであり、「負債の経済学」との親和性が高い。
資本主義経済の現実の中に入り込んでいる実務家たちの中に、主流派経済学を超克する高度な経済理論と同等の理解に達した者がいるというのは、実に興味深い。
問題視すべきは「民間債務」
私がヴェイグの名を知ったのは、10年代半ばである。詳しい経緯は覚えていないが、彼が14年に著した『The Next Economic Disaster(次の経済的災厄)』という著作を読んだのである。
そこでヴェイグは、過去の金融危機の例を分析し、対GDP比の民間債務が5年間で18%程度増加し、150%を超えると金融危機が起きるという仮説を示した。
なお、ここで問題となっている対GDP比の「債務」とは「民間債務」であって、「政府債務」ではない。
日本では、対GDP比の政府債務の大きさを問題視する声が大きい。しかし、自国通貨を発行する政府において債務不履行(財政破綻)はあり得ない。これは常識である。他方、民間債務の不履行は当然のことながらあり得る。
したがって、問題視すべきは、「政府債務」ではなく「民間債務」がGDPに占める割合なのだ。
ヴェイグによれば、アメリカでは、02年から5年間で対GDP比民間債務が20%増え、170%に達し、08年にリーマンショックに見舞われた。日本のバブル崩壊の時にも、85年から5年間で対GDP比民間債務は28%も増え、213%に達していた。
そして、中国では、15年までの5年間で、対GDP比民間債務は60%も増え、200%を超えていた。そこで、私は16年に発表した『富国と強兵:地政経済学序説』の中で、ヴェイグの仮説を引用しつつ、中国発の金融危機とその後の長期停滞の可能性を指摘した。その後の中国が、ヴェイグの仮説を実証したのは言うまでもない。
本書の第4章は、GDP上位7カ国の成長モデルを比較しているが、そのうち中国のモデルに関する記述は、特に学ぶところが大きかった。





















無料会員登録はこちら
ログインはこちら