「政府債務」より「民間債務」を直視すべき納得理由 インフレは貨幣現象ではない? 高橋是清やMMTにも通じる「負債の逆説」の衝撃

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もっとも、主流派以外の経済学、例えばジョン・メイナード・ケインズや彼を継承するポスト・ケインズ派、あるいはジョセフ・アロイス・シュンペーターの理論もまた、「マネーは負債から生まれる」という事実を基礎にしていた。

この事実は「信用創造」あるいは「貨幣創造」と呼ばれ、この事実に基づく貨幣理論は「信用貨幣論」と呼ばれている。

特に、シュンペーターを指導教授とし、かつポスト・ケインズ派に属するハイマン・ミンスキーは、「負債の逆説」を理論化した経済学者である。ヴェイグも本書の中でミンスキーに言及している。

ミンスキーの弟子であるL・ランダル・レイが創設した「現代貨幣理論(MMT)」もまた、信用貨幣論を基礎にした「負債の経済学」と呼ぶべきものである。

日本では、相変わらず、MMTと聞いただけで冷笑する者が後を絶たない。それは、「マネーは負債から生まれる」という資本主義の原理を知らないからだ。

「負債の経済学」を実践した高橋是清

ヴェイグは学者ではなく実務家である。しかし、実務家の中には、彼のように、資本主義経済の本質を理論的に理解する洞察力を示す者がいるようだ。歴史上の例を挙げれば、1934年に連邦準備制度理事会(FRB)の議長となったマリナー・エクルズが有名である。

エクルズは銀行家であったが、世界恐慌の最中、ケインズの著作を読まずして彼と同様の結論に達し、フランクリン・ルーズヴェルト大統領に政策を提言し、FRB議長に推挙された。その政策提言は、健全財政を金科玉条とする主流派経済学からは大きく逸脱したものだった。

しかし、それが採用されてニュー・ディール政策として結実し、アメリカは恐慌を脱したのである。そのエクルズは「我々の資本主義システム全体は、債権者と債務者の関係のシステムの上に構築されている」と述べている。まさに「負債の経済学」である。

日本における例を挙げれば、高橋是清がいる。高橋もまた学者ではなく実務家であったが、彼も「信用貨幣論」を理解していた。昭和恐慌の克服に成功した「高橋財政」の基礎にあったのも「負債の経済学」であったのだ。

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