献立は1週間分を暗記——80歳「スーパー寮母」の日課と段取り。若者の暮らしを支えて半世紀、学生寮を続ける活力はどこから?

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何事も早めに準備する母親を、幾子さんはこのように言う。

「私たち娘からしたら、『お母さんそんな早くせんと、まだいいよ』って思うんですけどね。でも、自分のペースでやれる方が、母にとってはいいのかもしれないです」

食器棚
料理に合わせて食器を用意する(写真:筆者撮影)

それを受けて、勝子さんはこう返した。

「そうだね。『まだ早いよ』とか、『あとで私がやるから』って言われる方がしんどい。自分のリズムで物事を動かしてるから、ストレスを感じないんです。エネルギーを発散しているから。それが性に合ってるのかもしれない」

取材した日の夕食はハヤシライスとマカロニサラダ。味見を頼まれ、「コクがあって、ご飯がすすみそうです」と感想を伝えると「よかった」と勝子さんは微笑んだ。

午後7時、食堂は再び活気づく。まもなく、一日を終える学生が食堂にやってくる。パートのスタッフに恋愛相談をする学生。たわいもない話をし合う学生。あたたかくて美味しい料理を楽しみに、ここに戻ってくる。

「一日でも長く」

「一日でも長く、ここに立っていたい」と語る勝子さん。

今後のグリーンハイツのことは、決めていない。いつか、自分がこのキッチンに立てなくなったとき、3人の娘たちに預けようと思っているそうだ。

勝子さんが「好きなようにしてくれればいい。どうするのも自由よ」と言った。キッチンで話を聞いていた幾子さんは「私たちが悪いようにするわけないってわかってるから、そう言ってるんでしょう」と冗談っぽく返した。

夫と守ってきたこの場所を続けたい――。はっきりと言葉にはしないものの、勝子さんの表情がそう物語っていた。

勝子さん
学生寮の運営を現役で続けている西川勝子さん(写真:筆者撮影)
【続きを読む↓】
50年学生を見てきた寮母が気にかける「最近の親子と若者」の変化。だからこそ貴重な「食事付き35人の共同生活」
池田 アユリ インタビューライター

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いけだ あゆり / Ayuri Ikeda

インタビューライター。愛知県出身。大手ブライダル企業に4年勤め、学生時代に始めた社交ダンスで2013年にプロデビュー。2020年からライターとして執筆活動を展開。

現在は奈良県で社交ダンスの講師をしながら、誰かを勇気づける文章を目指して取材を行う。『大阪の生活史』(筑摩書房)にて聞き手を担当。4人姉妹の長女で1児の母。

HP:https://www.foriio.com/amayuri4

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