まずは債務の恩寵の側面について。現代の経済システムでは、お金は借入(債務の創出)によって生まれる。債務が増えない限り、経済成長や富の蓄積は起こらない。つまり、債務=マネーであり、それが潤沢にあるからこそ経済は回っていく。
これが氏の言う「世界は負債で回っている」という主張であり邦訳書のタイトルにもなっている。
そして、債務の暗黒面について。債務の過多はその利払いを通じて、経済を萎縮させていく。過度の借入は個人であっても企業であっても収支を悪化させる要因となり購買力や投資行動を制限してしまう。これが行き過ぎると経済停滞が起き、最終的には国家レベルでの経済破綻にまで行き着くことになる。
この繁栄と破綻を同時にもたらす存在こそが債務だと氏は言い、それを債務のパラドクスと呼んでいる。
債務の暗黒面のほうはわかりやすいだろう。借りすぎれば利払いができなくなり破綻する。たとえば私が10億円を借りたとして、年に利子5000万円を返さなければならないとしたら、それ以上の収入がなければ利払いすらできなくなってしまう。もしやむをえず借りたお金から利子を払っていけば、ゆくゆくは破綻してしまうこと必至である。
では債務の恩寵面はどうか。
債務はいわゆる「信用創造」によりマネーを供給する。これはプールされたマネーを移すわけではなく、純粋にマネーを創出することになる。このあたりは直感的にわかりにくいかもしれないが、現代の経済システムの金融面に関しては真実であって、そのマネーにより投資が行われ、商品が買われ、GDP成長率を引き上げる要因となる。マネー量が多ければ多いほど資産価格は上がり商品購買力も高くなる。故に経済的に繁栄するという帰結になる。
経済危機に陥る「条件」
この債務の二面性がさまざまな、時に巨大な影響を経済に与えうる。氏は債務の増大は繁栄のカギ(必要条件)ではあるが、経済成長から乖離して膨張すると経済破綻が起きると言う。
その影響の顕著さは経済の影の主役と言ってもいいほどで、たとえば過去150年、40カ国以上にわたる150件以上の金融危機のデータを使ってその閾値の分析を試みている。




















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