「成長志向はコスパが悪い」若者が"高みを目指さない"ことを正解にしてしまった日本社会の歪み

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一方、私の専門は家族社会学なので、こうした若者たちの姿は、親との関係、家庭環境と切り離して考えることはできません。金間先生が指摘するように、バブル崩壊後に就職し、結婚し、子育てをしてきた今の親世代は、なるべくリスクを取らずに子どもを守ろうとしてきました。それは良い悪いではなく、親の愛情に基づくものです。

放任主義で子どもに何かあったらどうするのか。そう考えるからこそ、親が先回りして、失敗しないようリスクの芽を摘み取っていきます。もう10年ほど前になりますが、「うちの子はちゃんと授業に出ているでしょうか」と、親から大学に問い合わせが来たこともあります。また今は授業に出てこない子がいた場合、親に連絡することになっています。そういう意味では、パターナリズムが蔓延していると感じます。

―親の世代の意識を変えることは可能でしょうか。また、親が変われば、社会も変わるとお考えになりますか。

山田 変わるかもしれませんが、社会を変えるより親の意識を変えるほうが難しいかもしれません。私自身は、社会システムや制度を変えていくほうが先だと思っています。

例えば今なお根強く残る年功序列や終身雇用といった制度、そうした社会システムが人々の安定志向を許してしまっています。大学在学中に日本を飛び出して世界を放浪するより、安定志向で着実に単位を取って卒業し、着実に就職したほうが、一生安定した収入を得ることができる。日本はまだまだそうした社会システムで成り立っています。

安定を求めていたら生きていけない。そうした状況にならない限り、人々の意識は変わらないでしょう。それは社会学の基本的な立場でもあります。

波風を立てずに衰退を選択する日本人

—山田先生のご著書『希望格差社会、それから』では、日本には社会構造を変えたくないという一種の「慣性の法則」が働いていると述べられています。令和の今もなお、その状況は変わっていないように感じますが、いかがでしょう。

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