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すばる望遠鏡の最強観測装置がついに本格稼働。15年の国際プロジェクトを成功に導いた研究者たちの熱意と粘り強い対話、そしていくつもの奇跡

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このカメラでとらえた各天体の「色」を精密に測るのが、今回取り付けられた「超広視野多天体分光器(Prime Focus Spectrograph、PFS)」だ。約2400個の「目」がとらえた光は、光ファイバーで分光器に送られ、約4000色に分けられる。

マウナケア山頂域に建つ「すばる望遠鏡」。口径8.2メートルの主鏡を持つ世界最大級の望遠鏡だ(画像:国立天文台)

「目」は観測のたびにそれぞれ異なる天体の位置にセットされる。たくさんの目が違う方向を向き、その1つひとつで色を識別できるのが昆虫の複眼にたとえられるゆえんだ。

色を分けるのは、天体からの光に含まれる「原子の指紋」から、星や銀河の化学組成、星の種類や年齢を知るためだ。さらにドップラー効果による「色のずれ」を観測すれば、遠くの銀河が遠ざかるスピードを測り、宇宙の3次元地図を作成することもできる。

村山さんは「国勢調査をして日本の将来を予測するように、たくさんの天体のデータを一度に大量にとる『宇宙の国勢調査』をすることで、宇宙の誕生、進化、運命といった大きな疑問に迫りたい」と展望を語る。

事業仕分けで「崖っぷち」に

PFSを開発・設置するプロジェクトは、カブリIPMUが主導し、世界7カ国・地域の20を超える研究機関から150人以上が参加。総額約1.1億ドル(約160億円)の費用は、各研究機関からの持ち寄りで集められた。

村山さんらによると、プロジェクトはスタートから波乱含みだった。

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