しかし、その一方で、教育格差は縮まるどころか、むしろ拡大傾向にあります。
東大合格者の6割以上は関東出身

たとえば、代々木ゼミナールが発表した2025年度東京大学の前期日程合格者データによれば、関東地方出身者の割合は61.7%。これは、近畿を含めたその他地域の割合が、過去20年間で50.7%から38.3%へと約10ポイントも減少しているという事実とあわせて考えると、地方の学生が難関大に合格する割合が減ってきていることがわかります。
「地元志向が強まっているのではないか」という見方もありますが、それとは逆の現象も起きています。たとえば、北海道大学では2008年入学者は道内出身者が5割を超えていましたが、最新のデータでは約35%にまで減少しました(出典:代々木ゼミナール)。東北大学でも同様で、2000年代には東北出身者が約40%、関東出身者が約30%だったのに対し、2024年度のデータでは東北出身者が32.4%、関東出身者が39.4%となっています(出典:東北大学・大学入試研究ジャーナル)。
つまり、地方難関国立大学も、地元出身者の割合が減少し、関東地方出身者が増えているのです。
この傾向の背景には、首都圏の中高一貫校の存在があると考えられます。中学受験を突破して難関私立に進んだ学生たちは、学力水準が高く、大学受験でも「東大は厳しいけれど東北大なら」「京大は無理でも北大はB判定だから」などと、現実的に高偏差値の大学を狙ってくる傾向があります。
また、都市部では「偏差値で上の大学を目指す」ことが自然な空気になっており、その熱量がそのまま進学実績に反映されているともいえます。
「行きたい大学」を目指さない地方の高校生たち
一方で、地方では「行ける大学」を選ぶ生徒が多いです。
自分も東北地方の県立高校で大学進学に関する指導を手伝っていますが、「東京の大学に行きたい」「もっと上を目指したい」と努力する生徒も一定数いる一方で、「自分にはちょっと無理だから」と、最初から選択肢を狭めてしまう生徒も少なくありません。「行きたい大学」ではなく、「行ける大学」を目指し、そこまで貪欲には「上」の大学を目指さないのです。
この差を生んでいるのは、努力の差でも能力の差でもなく、「モデルケース」の多さではないかと考えられます。
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