日本のメディアが報じない「マイクロプラスチック」の怖さ 食物連鎖で植物の葉から人体へ、心筋梗塞のリスクは"喫煙で肺がん"並みの衝撃

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日本での報道の問題は、“マイクロプラスチックの健康被害についての認識が甘いこと”だと、筆者は考えている。

各紙が掲載しているのは、「プラごみ条約 実効性ある削減策探れ」(2024年12月4日:朝日新聞社説)や「路上のポイ捨てAIが検知 新たなプラごみ対策が始動」(2024年10月28日:日本経済新聞)など、プラごみ対策に関する記事が大部分だ。

もちろん、これ以上汚染を拡大させないため、プラごみを削減することは重要だ。そのための規制や技術革新が必要だろう。

ただ、すでに世界はマイクロプラスチックであふれている。現在進行中の人体への影響をもっと議論すべきだ。

認識が甘かったのは、日本だけではない。当初、世界はこの問題を楽観視していた。

2019年には欧州アカデミーによる政策のための科学的助言コンソーシアム(SAPEA)が「信頼できる影響の証拠はない」とする報告を欧州委員会に提出し、世界保健機関(WHO)も「データ不足で、明確な結論は出せないものの、現時点で飲料水中のマイクロプラスチックが人体に影響を与える証拠はない」という主旨の声明を発表していた。

人体の中にマイクロプラスチック

ところが、これらの見解は間違っていた。 どうやら、マイクロプラスチックは深刻な健康被害をもたらしそうなのだ。

関係者に衝撃を与えたのは、昨年3月、イタリア、アメリカ、ベルギーの研究チームが、世界最高峰の臨床医学誌『ニューイングランド医学誌 』に発表した研究結果だ。

この研究は、マイクロプラスチックが人体の心血管疾患リスクに関与する可能性を初めて臨床データで示した前向き観察研究だ。

対象は無症候性の頸動脈疾患 (症状はないが、動脈硬化により頸動脈の内径が狭くなっている状態)に対して頸動脈内膜剥離術 (頸動脈の内膜を外科的に切除し、脳梗塞を予防する手術)を受けた患者304人。

切除された頸動脈プラークからマイクロプラスチックの有無を、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析、安定同位体分析、電子顕微鏡といった専門的な手法を用いて評価。炎症マーカー(インターロイキン-18、インターロイキン-1β、インターロイキン-6、TNF-α)もあわせて測定した。

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