日本のメディアが報じない「マイクロプラスチック」の怖さ 食物連鎖で植物の葉から人体へ、心筋梗塞のリスクは"喫煙で肺がん"並みの衝撃

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筆者が注目しているのは、4月9日に『ネイチャー』電子版で公開された中国の南開大学を中心とした研究だ。この研究では、植物の葉が大気中のマイクロプラスチックを“直接吸収”して、植物の組織内に蓄積することが示された。

特に、ポリエチレンテレフタレートやポリスチレンなどのプラスチック粒子が、葉や茎などにある気孔から取り込まれ、水分などの通路である維管束組織や、維管束組織の表面にある毛状突起(トリコーム)に蓄積されている様子が観察された。

葉がマイクロプラスチックを吸収

研究によると、これまで見過ごされてきた経路の存在を示す証拠が見つかったようで、“生態系や人間の健康に重要な影響を及ぼす可能性がある”という。

『ネイチャー』編集部もこの研究を重視しており、News & Views欄にウィリー・ペイネンバーグ教授(オランダのライデン大学環境科学研究所)による解説記事を掲載している。

そこには論文の内容の概要に加えて、植物の葉に直接吸収されたマイクロプラスチックが植物組織内を移動し、最終的には食物連鎖を通じて人間に取り込まれる可能性に言及している。

屋外で栽培された野菜は、温室で育てられたものよりも10〜100倍高い濃度のマイクロプラスチックが検出されたため、ペイネンバーグ教授は「注意が必要」との見解を示している。

人体でのマイクロプラスチックの蓄積は、以前から指摘されていた。

2023年にはハワイ大学の研究チームが、2006年、2013年、2021年に収集された計30の胎盤サンプルを分析した結果を、環境に関する科学雑誌 『Environment International』誌に発表した。

この研究によれば、2006年には10サンプル中6つ(60%)から、2013年には9つ(90%)から、2021年にはすべてのサンプル(100%)からマイクロプラスチックが検出されたという。

このような報告も、南開大学の研究結果を知れば納得がいく。我々が主食とする穀物が汚染されていれば、人体に蓄積するのも当然のことだろう。これは重大な問題であり、『ネイチャー』がマイクロプラスチックに関する論文や記事を多数、掲載するのも納得がいく。

ところが、この危機感は日本に伝わっていない。

新聞記事データベース「日経テレコン」を用いて、過去1年間に全国紙5紙に掲載された「マイクロプラスチック(マイクロプラなどの略称を含む)」という単語をタイトルに含む記事を検索したところ、わずかに10しかなかった(5月23日現在)。前出の南開大学の研究を紹介した記事も見当たらなかった。

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