路面電車と違う迫力「道路に乗り入れた列車」列伝 名鉄や新潟交通、京津線など「併用軌道」の記憶
同線は1997年10月の京都市営地下鉄東西線の開業と同時に、地下鉄直通のため京津三条―御陵間が廃止となった。廃止された区間はその多くが併用軌道だった。筆者は名車といわれた80形や、現在も石山坂本線で走っている600形が主力だった時代に訪れているが、蹴上―九条間には66.7‰の急勾配があり、80形がモーター音を東山に響かせながら走行していた。
現在は地下鉄区間から先の山科からがかつての京津線のままで、ここからは「逢坂越え」といわれる最大61‰の急勾配と半径40mの急カーブがあり、さながら山岳鉄道の様相である。サミット近くの大谷駅から下って東海道本線を赤レンガ積みの「蝉丸跨線橋」でオーバークロスすると上栄町駅。この先、びわ湖浜大津駅までの間が併用軌道区間で、地下鉄にも乗り入れる4両編成の800形電車が「道路」を駆けるのだ。

800形は京津線の地下鉄直通運転開始と同時に投入された。路面電車は1編成30m以下という規定があるが、800形は4両編成で66m。日本では最長の併用軌道を走る電車である。
パノラマカーが橋の上を車と並走
大型の電車が道路上を走った区間といえば、名鉄犬山線の犬山橋を忘れてはならない。これは1925年に完成した、犬山遊園―新鵜沼間の木曽川に架かる鉄道と道路の併用橋だった。
線路は橋の中央部に複線で敷かれ、左右が一車線ずつの道路だった。この併用区間を名鉄特急「パノラマカー」や「パノラマデラックス」などが長編成で、併走する自動車を威嚇するかのようにチャイムを鳴らして走る姿は壮観だった。また、名鉄線と国鉄(JR)高山本線を直通運転したディーゼル特急「北アルプス」の犬山橋走行も忘れ難い光景である。


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