「やるべきことが多すぎて、どこから手をつけたらいいのかわからない」悩む時間を最小化するための思考法

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最後に⑥。相手にマトリクスの形で整理してもらうことで、さまざまな気づきを得ることができるわけだ。

時には、マトリクスで現実を可視化することで相手を驚かせ、対策を練らなくてはいけないという意識を植え付けることも可能です。たとえば上司が部下のAさんに対して下図のような観察結果を示したら、Aさんは「頑張らないとまずい」と思うことでしょう。(23ページより)
図表 チームメンバーのパフォーマンス評価
図表 チームメンバーのパフォーマンス評価(『マトリクス思考』p.23より)
副次的効用の観点

副次的効用の観点では、以下が挙げられる。

⑦ 論理思考の能力が鍛えられる
⑧ 創造的思考が鍛えられる
(23ページより)

⑦の論理思考は、以下のようなさまざまな要素から成り立っている。

・そもそも何を考えるべきかを正しく設定できる
・MECEを意識して全体を俯瞰的に捉えられる
・重要な点とそうでない点を峻別できる
・物事を適切に分解できる
・物事の関係性を正しく理解できる
・筋道が通っている
・言葉の定義が明確である
・数字を適切に用いている
(24ページより)

マトリクスを用いた整理や分析、コミュニケーションは、これらすべてを必要とする。したがってマトリクスを用いることは、論理思考の訓練の機会にもなるわけである。

最後の⑧創造的思考は、とくにオリジナルのマトリクスを考えることで鍛えられるもの。たとえば部下をタイプ分けする軸の候補としては、「業務の定型化度合い」「習熟度」「コミュニケーションの活発さ」「成績」などが挙げられるだろう。

また、他にも以下のような候補が考えられる。

・周りへの配慮度合い
・融通がきく度合い
・対立を厭わない/対立回避的
・リスクテイクの度合い
・感情的な度合い
・自律的に動く度合い
・プライベート重視度合い
・ビジネス知識の豊富さ
・リーダーシップの強さ(経営学ではリーダーシップとは生得の資質ではなく、習得可能なスキルと考えます)
(24〜25ページより)

軸の候補だけでももっとあるはずで、組み合わせの数はさらに増えるに違いない。新たな軸と組み合わせたなかから、使えそうなものを選ぶことも決して楽ではないだろう。つまり、これを行うためには、創造的思考力を同時進行で高める必要があるのだ。

マトリクス思考は応用が利く

いずれにせよ、こうして基本的な概念を確認してみただけでもマトリクス思考の有用性を実感できるのではないだろうか。

ちなみに以後の章では、コミュニケーション、リーダーシップ、思考、戦略・マーケティング、組織マネジメント、会計、テクノベートなどのカテゴリーごとに多くの新規マトリクス事例が紹介されてもいる。

自身の業務にあてはめて活用してみれば、仕事をシンプルかつ効率的に変革させることができるかもしれない。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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