東大病院で救急医療の最前線にいた医師が気づいたこと――俯瞰こそが「最大の心の武器」であり「人生の大きな助け」になる
「自分自身とどう向き合うのか」という問いに答えを示すのは、そう簡単ではありません。なぜなら、人間の思考には「エゴ(自我)」というものがついて回るからです。
たとえば恋愛は、エゴについて理解する学びになります。
例をあげるなら、恋人が別の人を好きになり、別れを切り出されたとしましょう。相手はあなたといるより、別の人といるときのほうが幸せだと感じています。そんなとき、多くの人は怒りや嫉妬、悲しみなどの感情に支配されてしまうことでしょう。
けれどもそこで、自分のほうが気持ちが強かったとか、大事にしていたなどといった「自分のものさし」ではなく、相手を尊重し、相手の幸せを祝福できるかどうか。相手の喜びを自分の喜びとして受け止める。相手が幸せであれば、自分も幸せになれるという心の在り方。
なかなか理解しがたいかもしれませんが、これがエゴを超えたところにある究極的な愛のカタチといえるでしょう。
エゴは家族間でも現れる
相手への執着を解き放ち、あなたはあなた自身の新たな人生を歩んでいけばいいのです。
エゴとは、自分の考えや価値観を無意識に他者に押しつけようとする心の動きです。それは家族間でも顕著に現れます。
親が「自分にとって最善だと思うこと」を子どもに押しつけるとき、それが子どもにとって最善かどうかは、実は誰にもわかりません。なぜなら親と子では才能も個性も異なり、そもそも別の「個」である存在だからです。
家族といえども別の「個」。私たちはその中で相手を尊重しながら良好な関係を築くという、矛盾をはらんだ人生の課題に取り組んでいるのです。
例を出すと、子どもに公務員になってほしい。家業を継いでほしい。パートナーに出世してほしい。老後の考え方が違うので改めてほしい。こういった個人的なエゴで相手のことを支配し、変えようとしても無駄です。なぜなら、相手は変わらないからです。
そうではなく、「なぜ自分にはこんなことが起きているのか」「自分は本当は何を望んでいるのか」と、俯瞰して自分自身の内面を見つめ直してみましょう。
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