東大病院で救急医療の最前線にいた医師が気づいたこと――俯瞰こそが「最大の心の武器」であり「人生の大きな助け」になる
俯瞰とは、物事を大きな視点で、上から全体を見渡すことです。もし今、悩みごとや葛藤が思い浮かぶなら、その物事を俯瞰して見てみましょう。そうすることで、それぞれの立場や事情が明確になり、自分の今置かれている立場も役割も、自然と明らかになってくるはずです。
大切なのは、感情的にならずに、物事を一度自分から切り離して考えてみること。それによって、自分の「分」をわきまえることができ、自ずと問題点が浮かび上がってくるのです。そうして冷静さを取り戻したら、不必要に不遜になったり、悲観することもありません。
物事を俯瞰できるということは、人生の大きな助けになり、最強の心の武器となります。
物事も他人も「立体的」に見る
俯瞰という視点について、もう少し深くお話ししましょう。
物事の見え方というのは、「どこから見るか」によってまったく異なってくるものです。俯瞰とは、三次元の見え方。つまり平面的な視点ではなく、立体の世界の中で物事をとらえることです。
富士山を想像してみてください。頂上を目指す登山者は、富士山を自分の進む道からしか見ることができません。つまり富士山の一面だけを見ています。地を這う小動物だったら、ひょっとして凸凹の道の石しか見えないかもしれません。
ところが、人が鳥のように飛行機の上から富士山を見る、いわゆる俯瞰すれば、そのきれいな円錐形の全体像が見えることでしょう。つまり、「俯瞰の不在」の状態では、私たちもまた、視野を狭くしたまま、感情や思考に巻き込まれてしまうことがあります。
言い換えるなら、俯瞰とは「距離をとる」ということ。つまり、距離をとることで、物事が立体的に見え、人との間にも、適切な間合いが見えてくるのです。
人には、それぞれに合った関係性というものがあり、ときには、近づき過ぎてはいけないという場面もあるでしょう。
この感覚は、人生を生きるための「杖」のようなものです。人生というでこぼこの道を歩くとき、杖があれば安心して歩けるように、俯瞰という視点があるだけで、見える世界は違ってくるのです。
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