≪山尾騒動にも言及≫玉木雄一郎「消費税の一律減税は、安定的な賃上げ環境を作る最善策」(前編)

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塩田:他党の主張を見ると、食料品の消費税率だけゼロにするという案があります。

玉木:まず中身が分からない。二つあって、例えば医療費のように、非課税取引としてゼロにするとなると、業者に消費税付きで払う一方、患者さんへの請求は消費税を乗せられない。例えば飲食店が食料品を買って加工してお客様に出しても、仕入れの税額控除で引けなくなる。これは厳しくなるのでは。

一方で、輸出品の還付金みたいに、免税取引にして、控除は受けられるけど、後で控除分を国から還付してもらう制度でやることも可能です。だが、そのときは当然、課税事業者になってもらって、インボイスも入れて、取引を管理できるようにする必要がある。還付は後で返ってくるので、当面の資金繰りなどの問題もある。事務的にもどうかなということもあり、それを1年間だけやる意味があるのかな、と思います。

消費税率を下げるなら、一律で下げるほうがいい。仕入れ税額控除の計算でインボイスは要りません。中小企業に対して、今、猶予措置、経過措置でいろいろな支援策をやっていますけど、事務負担が厳しいな、という声も聞きますから。

財政規律派が見落としているポイント

塩田:他方、財政規律派を中心に「消費税率引き下げはノー」という声も根強いですが。

玉木:私も財政規律は大事だと思っていますが、経済を元気にしてデフレに戻さないことが一番ですよ。今年はGDP(国内総生産)が 600兆円ぐらいになり、税収の見積もりは78兆4000億円で、だいたいGDPの12%から13%が税収です。

私は10年で日本のGDPを1000兆円にするという明確なビジョンを描いていますが、税収がGDPの12~13%なら、そのときは税収が120兆円~130兆円です。税外収入は今、9~10兆円で、それが15兆円ぐらいになるでしょうから、税収と税外収入を合わせて 140兆円ぐらいになると思います。今、歳出は 115兆円です。もちろん歳出も合わせて伸びていくと思いますが、それをうまく抑えれば、税収でまかなえる財政体質になる。財政赤字も縮小できます。

実績を見てくれと言っているのは、私も想像できなかったけど、2020年にコロナが始まってから今まで5~6年で、インフレと賃上げで国と地方の税収は24兆円増えている。消費税率で換算すると、税率を9%ぐらい増税したのと同じですが、1%も税率を上げずに実現しています。

一方、所得税は累進課税になっていますから、賃金が増えると、高い税率がかかるようになるので、たくさん税収が入ってきます。もしあのコロナのまっただ中で、5~6年後に25兆円ぐらい必要になるといって消費税率を9%引き上げていたら、今、経済はガタガタになっていたでしょう。

塩田:出身の財務省は、その点はよく分かっているのでしょうか。

玉木:そこは厳しいですね。予算は単年度主義です。彼らを責めても仕方がないと思っています。この数年の経済成長とインフレで、実質的な国の債務の対GDP比はすごく減っています。税収が増えているのも事実で、われわれも財務省も、税収を増やすことについては一致している。それを税率アップでやるか、経済を成長させ、賃上げや一定程度の安定的なインフレがあるような世界を作るか。そこで考え方が分かれている。

→後編へ続く

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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