ノーベル経済学賞受賞者スティグリッツは、いまトランプ政権をどう見ているのか

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その理論の秀逸さが認められ最終的にはノーベル経済学賞を受賞する氏は、単なるモデラー(理論家)ではなく経済政策実行局面にも大変な興味を持っており、社会がよく回っていくための実効的な行動をする実務家でもあった。政府や国際機関での時に火がほとばしるかのような躍動はもはや伝説的ですらある(例えば当時のIMF批判などは有名)。

現役経済学者としては年長であり、経済学全体を見渡しながら最高位の経済学者たちと対論ができ、また世界中を飛び周り政治家や実務者と対話ができる数少ない論客である。

さらには一般市民にも積極的に語りかけもする(これはOccupy Wall Street 「ウォール街を占拠せよ」騒動に対する行動が有名だ)。

つまり、理論と実践のパワーにおいて現代経済学者として最強だ、と(私が強弁)してもさほど異論は出ないのではないだろうか。

そして、その彼が満を持して世に問うたのが「自由とは何か」なのである。

最強経済学者がいま問う「自由とは何か」

スティグリッツは著書が多く、前著の『スティグリッツ プログレッシブ キャピタリズム』もかなりのボリュームを伴う網羅的な内容だが、今回の著書ではより広いスコープを扱っている。

「自由とは何か」という、もはや経済学という範疇を超えた問いを据えつつ、経済や法、社会的慣習といった様々な分析を経て政治的手段を提案し、より良い社会への前進を実現しようと企てている。多くの人たちが日々思うであろう素朴な疑問から出発して、諸問題に対し真摯に応えようというこのアプローチは、スティグリッツ自身のアイデアだったようだ。

時に経済学由来の難解な記述を伴う氏の主張をより広範に問うための方策としては効果的なようで、これをきっかけに経済学者から識者やメディア、一般市民まで様々な議論を始めている。

海外からの関心も高い。フランス、イギリス、ドイツをはじめ、海外からも引っ張りだことなっている状況は、いまの欧米の自由主義陣営(いわゆる“西側”)の政情不安が深刻となっていることと無関係ではないだろう。対処法を“スティグリッツ経済学”から是非とも得たい、という気持ちの表れと思われる。

では、スティグリッツが考える対処法の、その基本的な考えを以下に見ていこう。

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