「結構重い処分だよね?」「クビにならなかっただけマシ」と処分の内容に賛否…フジテレビが元編成部長B氏を《クビにしなかった》理由

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和泉氏は「これも元編成部長の認識が問題となるため事実認定が難しい」と言い、続ける。

「通常の訴訟では、当事者が自己に不利な証拠を提出しなかったとしても一概に違法とは言えない。もっとも、元編成部長はフジテレビに雇用されており、過去の判例に照らしても会社が行う不正調査に協力する義務がある。とすると、たとえば元編成部長が、将来調査が行われると認識しつつ大量のメールを削除しているなど、証拠隠滅の意図があったと評価できる場合には懲戒理由となりうるだろう。

したがって、メール消去について懲戒理由として取り上げていない点については、個人的には疑問に思う。もっとも、元編成部長の認識が明らかではない段階でメール消去の事実のみを理由に懲戒解雇まで行うのはリスクがあると私が同社の弁護士ならば助言する。通常、会社側の弁護士は法廷闘争を視野に入れ、会社に損害が生じないように処分を検討するからだ」

元編成部長の(3)(4)の行為も指摘する。女性社員を一部の報道で言うところの「置き去り」にしたことだ。

「たとえば、飲酒の有無、セクハラ被害の詳細内容などが不明なため、元編成部長が性犯罪の具体的危険性をどこまで認識したうえで部屋を離れたのか、正確な評価することは難しい。明確な根拠がない中で元編成部長の認識にまで踏み込んだ形で懲戒解雇を行うことは、法廷闘争になった場合を想定すると、避けたほうがいいという判断は理解できなくもない。

とはいえ、一般的には、密室であるホテルの室内に男性と女性社員のみを残し、退席すれば、女性が性犯罪に遭う可能性も否定できず、社会常識に照らせば一定のペナルティーを科す理由は十分にある。そこで退職勧告に次ぐ、降職にしたのではないかと推察する。

弁護士として考えた場合の対応が難しい理由の1つは、特に(1)(2)(3)は元編成部長個人の問題というよりも、同社全体の組織風土の問題だからなのだろうと思う。セクハラのリスクが日常化している職場環境の中で感覚が鈍磨し、リスクが現実化したという位置づけになるのではないだろうか」

「降格」ではなく、「降職」とした意味

4段階の降職について大津氏は「同社の就業規則や人事制度を把握していないため、正確には判断が難しい」と前置きし、解説する。まず、着眼したのが「4段階の降職」だ。

「降格ではなく、降職とされているのがポイント。多くの日本企業が採用してきた職能資格制度であれば、通常、降格と規定される。同社では役割等級制度など比較的ジョブ型に近い人事制度を採用しているのかもしれない。

職能資格制度における降格は、能力基準で定められた人事制度上の等級を下げること。降職は現在の役職や職位からさらに低い役職、職位に下げるもので、役割が見直されれば職務ランクが下がることが多い」

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