「結構重い処分だよね?」「クビにならなかっただけマシ」と処分の内容に賛否…フジテレビが元編成部長B氏を《クビにしなかった》理由

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「懲戒解雇にし、元編成部長がそれを不当だとしてフジテレビを訴えたとする。その場合に、同社側の弁護士は法廷で勝ち切るだけの根拠が不十分と判断したように思う。元編成部長は性暴力の直接の加害者ではないと認定されているためだ。ましてここまで世間の注目を浴びると、裁判では負けることは許されない。したがって解雇以外の処分を検討するよう同社に進言したのではないか。

元編成部長に可能な限りの重いペナルティーを科しつつも、法廷闘争に発展するかもしれないことも想定し、同社に大きな損害がおよばないようにしたようにも思える。その意味では、バランスのとれた処分とも言える」

社会保険労務士の大津章敬氏も「決して甘い処分ではない」と言い、こう語る。

「懲戒解雇はもちろん、退職勧告も雇用関係を解消させるという点では実態は解雇に近い。今回は直接の加害行為が認められない以上、懲戒解雇・退職勧告は難しいと考える。しかし、社内における立場を前提とすれば(1)から(3)の行動は大きな問題。また結果として会社業績にも大きなダメージを与えることとなった。これらを考慮すると、降職という退職勧告の次に重い処分を行ったのではないだろうか。

社会を騒然とさせた事件だけに、“甘い”といった声はある意味で当然かもしれない。だが、過去の裁判例など労働法の観点から見ると、処分としてできうるギリギリのところまで試みたように思われる」

編成部長を「懲戒解雇」にしなかった理由

2人は懲戒解雇をしなかった大きな理由の1つに、本人が加害事件に直接関与していない裏付けを同社が得たからだと見る。裏付けを得る手段として、少なくとも3つ考えられる。

1つめは、12月から1月にかけて人事部、担当役員、社長などが本人に繰り返し確認した可能性がある。

2つめは、第三者委員会によるヒアリングを通じて3月末に調査報告書が発表されたが、ここでも関与していないと結論が出た。

3つめは、調査報告書をもとに、第三者委員会とは別の弁護士らが4月から5月にかけてさらに事実確認をした。同時期に懲戒処分の内容を議論する社内の賞罰審査委員会でも審議を行った。

これら一連の手続きで本人が事件当日には直接関与していないと結論を導いた以上、懲戒解雇の選択肢はなくなったという。

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