「なぜ、競争の厳しい家電市場に参入?」家具のニトリがドラム式洗濯乾燥機を販売する深い事情
しかし、近年は国内大手電機メーカーが何社も国際競争に敗れ、海外に買収されたり、家電から撤退したりすることが相次いで、海外メーカー製品も店頭に並ぶようになり、ブランド信仰はかなり薄まってきたように思われる。そうした中では、家電ブランドではないが、全国展開して知名度も十分に高いニトリが5年保証(4万9900円以上、有償で延長可能)をつけて低価格販売するのであれば、試してみる価値はあるのだろう。
長い間、メーカーブランド品のディスカウント販売をしてきた家電量販店には、消費者の来店頻度の重要性に対する認識が乏しいかもしれない。ヤマダの「くらしまるごと戦略」が正論ながらなかなか進捗しないのは、家電量販店の今の来店頻度では、消費者のロイヤルティー(店に対する愛着心)を持ってもらいにくいからではないか。
百貨店にデパ地下があるのも、ドラッグストアが食品を強化しているのも、消費者の来店頻度を高めるためにやっている。低価格で来店誘致するディスカウントストア最大手ドン・キホーテでも、食品の低価格販売は集客のためのまき餌である。消費者は頻繁に訪れる店に親近感を持つし、そこでさまざまな商品情報を入手する。こうした特性をよく把握したうえで、ニトリは勝算をもって家電に参入しているのである。
ニトリ家電の成長性
ニトリの家電は現在では売り上げ300億円規模で、それを早期に1000億円まで拡大する目標を掲げている。これが家電量販店大手の牙城を揺るがすほどの規模ではないが、ニトリ家電は一定の存在感を持つまで成長可能だろう。
対して、2019年大塚家具(資本提携前売り上げ370億円ほど)をM&Aでグループ化したうえで、ヤマダの2024年度家具インテリア売り上げは380億円と大きな伸びはない。ヤマダは家周り需要に幅広く対応する店づくりを目指しているようだが、見る限り女性消費者の来店頻度を上げるという視点が不十分なようにみえる。
家周り需要を広く取り込んでいきたいのであれば、実質的な購買決定権限者が誰なのか、どうしたら認知してもらえるのか、を踏まえた店づくりが求められる。その意味で、女性消費者の支持でここまで来たニトリの家電への殴り込みは、業界へのいい刺激になるのかもしれない。
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