新スタジアム効果でV・ファーレン長崎の観客数は2年前から倍増、1000億円投資で長崎を変える「ジャパネット流」地域創生

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5月末時点の総来場者数は319万人を突破。「決して悪くない数字。オープンから半年を過ぎたところですし、前向きに評価しています」と髙田氏は力を込める。

「われわれが投じた約1000億円は、もともと25~30年で回収するという計画だったんですが、ホテルの稼働率がもっと上がれば、それに近いところまでは行くかなという手応えを感じています。ホテルに関しても、スタジアムのバックスタンドの目の前に立っているので、観光やビジネスで訪れた人でも部屋の窓からのんびり見てくれるかもしれない。そういう楽しみができたのは大きいですね。

日本人の感覚だと『バックスタンド側にあんな巨大施設があっていいのか』と疑問に感じることもあるかもしれませんが、ルールでガチガチにしてしまったら、逆にロスも多い。民間だからこそ、できたことかもしれませんが、こういう作りのホテルとスタジアムがあってもいいと私は考えています。

実際、ホテルの収入が大きな部分を占めていますし、飲食も想像以上に好調です。スーパーも入っていて、試合日以外でも、そこで買ったものを持ち寄ってコンコースでもワイワイと賑やかに飲み会している姿も多いです。目の前には浦上川も流れていますし、稲佐山も見える。新たな憩いの場が生まれたという意味でも大きなこと。もう自由に使ってくださいという感じです(笑)」

サッカーの枠を超えて地域創生のモデルに

ただ、多くの人が集まれば集まるほど、維持管理のコストやメンテナンス費用もかかる。「約1000億円投じた一大プロジェクトなのに、年間売上高は100億円程度にしかならない。ジャパネットにとってはマイナスじゃないか」といったネガティブな目線を向けてくる人もいるようだ。

「われわれのグループは年間売上高は2700億円程度なので、100億円だと全体の4%しか貢献度がない。それでもなぜ1000億円を投資したかというと、売り上げとか利益優先ではなく、長崎の人たちの楽しみにつながることが一番大切だと考えたんです。

そして、このプロジェクトが成功したとき、日本中で同じように民間企業がスタジアムやアリーナに投資しようという機運が生まれ、日本がいい方向に変わっていけばいい。そういう先々のリターンを考えたら、そのくらいの金額を投資する価値は十分あると考えました」

髙田氏、そしてジャパネットの大胆なチャレンジは、確かに全国各地の人々の心を揺さぶっている。開業以来、企業や自治体など関係者の視察は3354人に上っており、一般のスタジアムツアーにも6600人が訪れている。

とくに前者の関係者視察では「われわれの地域でもこういうスタジアムを作りたい」という情熱を持って訪れる人が少なくないという。長崎スタジアムシティが地域創生の1つのモデルになっているのは間違いない。

後編に続く)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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