「見事なテクノロジーによる伝統の継承の可能性」──アップルCEOティム・クック氏が讃えた日本人開発者が取り組むアプリによる問題解決
濱本氏はアップル本社で行われた受賞イベントで、アップルのCEO、ティム・クック氏に直接アプリのプレゼンテーションを行う機会があった。
「私が説明している間も、すごく真剣に聞いてくださってて。私がアプリの良さを説明したときも、実際にアプリに触れたときも『ファンタスティック!』とおっしゃっていて、嬉しかったですね」(濱本氏)
ティム・クックCEOは、濱本氏の取り組み、そして毎年日本から受賞者が生まれていることに対して、次のようにコメントした。
「濱本太輝さんの素晴らしい作品は、テクノロジーによって伝統文化が継承され、その魅力が世界中の人々に届けられるという可能性を見事に表しています。花札を新たな形にし、日本の伝統を大切にしながら、新しいインスピレーションを次の世代へ伝えています。
日本の開発者の皆さんが持つイノベーティブな精神を体現する太輝さんを、こうして讃えられることを心から嬉しく思います」(ティム・クックCEO)
問題解決の手段としてのアプリ
濱本氏がプログラミングを始めたのは、大学に入ってからだった、というのは意外な事実だ。
決して「小学生の頃からプログラミングを学んでいて」というキャリアではなかった。
濱本氏がプログラミングを学び始める際に出会ったのが、iPadで動作する「Swift Playground」という、アップルが作った無料アプリだった。アップルのプログラミング言語であるSwiftで、プログラミングそのものに入門できる。
今回の受賞が3度目のチャレンジだったということは、学び始めて1年で、濱本氏はSwift Student Challengeに応募していたことになるわけで、習熟の速さもさることながら、普段使っているiPhoneやiPadで動くアプリを自分で作れる点は、単純にモチベーションが上がるという。
そのうえで、濱本氏は、プログラミングを通じて、実社会のさまざまな課題を解決するアプリケーションを開発することに意欲的に取り組んでいる。
彼のこれまでのプロジェクトや現在進行中のプロジェクトは、いずれも具体的な問題意識からスタートし、技術を用いて「解決策としてのアプリ」を作り上げるものだった。
「大学を卒業する前は、飯村研究室という研究室に所属し、研究として地域課題の解決に向けたアプリ開発を行っていました。地元の熊本県にある江津湖における外来種問題を解決するためのアプリです。
学校教育で外来種に関する学習を受ける機会が少ないという課題に対し、ゲーム感覚で楽しみながら外来種問題について学べるアプリを開発しました。このアプリは現在、熊本県の小学生が使用するiPadに導入されています」(濱本氏)
また、漢字を書くアプリも開発しているという。コンピュータが普及した現代社会で、漢字を正しく書く機会が失われているという問題に対処することを目指している。
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