見て覚えろ、は無理。マニュアルがないのはあり得ない。「普通こうでしょ」Z世代から上の世代への強烈な違和感

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一方、Z世代はデジタルネイティブ。インターネットという集合知を活用して、効率よく「正解」にたどり着くことに長けた世代です。何度も前の人がつまずいたようなポイントに、なぜ自分がさらにつまずかなければならないのか、解決策があるなら共有してくれたほうが、無駄な苦労が省ける分、そこからさらに先に進むことができて効率的だと考えます。

経験から自分なりの解決方法を見つけてきた上の世代と、既存の解決策を参照・応用して無駄を省きたいZ世代では、ここがすれ違っているのです。

また、Z世代がマニュアルを求めるのも、ネガティブな意味ばかりではありません。

実際に話を聞いてみると、「明文化されたマニュアルがあれば、いちいち先輩の手をわずらわせずに済む」「マニュアルで全体像がわかっていれば、自分が理解できない箇所が特定できて、効率よく指導が受けられる」など、忙しい上司や先輩を思いやる気持ちもうかがえるのです。

「言わなくててもわかる」は通じない

日本社会は世界で最もハイコンテクストな社会といわれています。ハイコンテクストというのは、常識や価値観、知識、言語、背景理解などが共通認識となっていて、言葉で詳細に説明しなくてもわかり合えることを指します。簡単に言ってしまうと、「言わなくてもわかるよね、普通こうだよね」でわかり合える社会ということです。

上の世代が自分の「普通」に従って、「まずはあなたの思う通りにやってみて」と指示を出してもZ世代には伝わりません。上の世代が「マニュアル主義」と思おうが、Z世代にとっては指示とは手順や達成すべきステータスが明文化された状態で与えられるのが「普通」だからです。

いったん自分の「普通」を忘れて、どんな思いで指示を出しているのか、言葉にしてみてはどうでしょうか。

「自分で実際につまずいてみて、自分なりの解を考えることで、能力の幅を広げてほしい」「マニュアルに書いてあることだけにとどまらず、若い視点で自分なりの工夫をどんどん見つけてほしい」、そんなふうに、指示の背景にある期待をきちんと言語化することで、Z世代は安心して取り組むことができますし、異論があるときにも「でも、自分はこんなふうに考えます」と、口に出しやすくなります。

言葉にしなければすれ違ってしまうお互いの「普通」を、しっかりと伝え合い、理解しようとすることが重要です。世代間ギャップは拡大し、「言わなくてもわかる」は通じない時代になったということでしょう。

松下 東子 株式会社野村総合研究所シニアプリンシパル

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まつした もとこ / Motoko Matsushita

1996年東京大学大学院修了後、野村総合研究所入社。以来、一貫して消費者の動向について研究し、企業のマーケティング戦略立案・策定支援、広告・プロモーション効果測定および広告戦略策定支援、ブランド戦略策定、需要予測、価値観・消費意識に関するコンサルテーションを行う。
また、日本人の意識と行動を実証的に分析・提示する「NRI生活者1万人アンケート調査」(1997年~)を担当。共著書に『日本の消費者はどう変わったか?』(東洋経済新報社、2022年)、『Z世代コミュニケーション大全』(東洋経済新報社、2025年)などがある。

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