32万組の結婚が失われた結果…「出生数過去最少70万人割れ」を騒ぐ人に欠けている視点

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少子化とはほぼ婚姻減によるものであることは明白で、それも20代の婚姻の減少です。しかも、その20代の婚姻の減少のほとんどは経済的中間層に集中しており、逆にいえば、上位3割の所得層の未婚率はこれだけ婚姻減といわれている中でもまったく減っていません。しかも、所得の高い大企業勤務や所得安定性のある公務員に限ればむしろ未婚率は改善されてもいます。

重要なことは、経済中間層は決して貧困ではありません。かつてはそこがボリューム層となって結婚して家族を作っていた若者たちでした。しかし、食うに困るほどの貧困ではなくても、行動することがリスク、人と交流することは危険という3年間の習慣が無意識に心に刻まれて、本来「必然化する偶然の行動」すらしなくなってしまったのではないでしょうか。言い換えれば「少しの冒険すらしない繰り返しの日常」に埋没した方が安心だという心理です。

婚姻増を目的とした婚活支援の無意味さ

恋愛も結婚も子育ても若者にとっては冒険のようなものです。どんなものでも多少の痛みや失敗はあります。しかし、それすら忌避して「安全なのは何もしないことだ」と刷り込んでしまったのはひとえに大人たちの責任かもしれないのです。

子育て支援をどれだけ充実させても、それで出生数が増えないのと同様、婚姻増を目的として婚活支援をしても効果はありません。むしろ政治家が自分らの選挙対策的に支援などとおためごかしを言いながら、余計な国民負担率が増える方がかえって若者の行動を阻害するでしょう。

お金や機会を奪わないことはもちろんですが、何より若者の邪魔をしないだけの方がよっぽど意味があると思います。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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