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〈自己株買いの産物〉キヤノン「本当の時価総額」は5兆円台でなく3兆円台? 日本の常識は世界の非常識か

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日本取引所グループが公表している「時価額順位表」で算出に用いられている株数は「上場株式数」。NTTの筆頭株主が財務大臣であるといったように政府が保有している分を発行済み株式数から除いているが、自己株は含んでいる。

一方、アメリカでは時価総額を計算する際の株式数は「Number of Outstanding Shares」と呼ばれる数字が基準だ。「外部が保有する株式数」という意味で、自己株を除いた発行済み株式数を指す。

6月20日時点でIBMの時価総額は約2611億ドル(1ドル=147円換算で約38.4兆円)。日本のYahoo!ファイナンスと日経会社情報(QUICKより提供)でも自己株を除いた時価総額を発信している。

仮に自己株を含めた「日本流」の計算をすると、約6394億ドル(約93.9兆円)となる。IBMの発行済み株式数は今年3月31日時点で約22.8億株だが、自己株はその57%の約13.2億株であるため、これだけの差となる。

アメリカ企業は基本的に消却しない

M&A(合併・買収)や企業価値評価に詳しい一橋大学大学院の田村俊夫教授は次のように指摘する。

「世界的には自己株数を除いて時価総額を計算するのが一般的。アメリカ企業は基本的に自己株を消却しないので、当然のように自己株数を差し引く。消却しないのはそもそも自己株の存在を気にする人がいないからだ」

田村教授の指摘は意外に聞こえるかもしれない。「株式交換での買収など自己株を活用する機会がなく、再び市場に放出されれば1株当たり利益が希薄化する」。そんな「市場の懸念」を見聞きすることは少なくないからだ。

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