「もし、がんと診断されたら…」。YouTubeチャンネル登録者数20万人の"がん専門医"が教える「病院の選び方」と「治療のゴール」
病院ごとの患者数を調べるためには、インターネットや雑誌などの病院ランキングを参考にすると良いでしょう。
また最近では多くの病院が、がんの治療(手術)件数や治療成績(生存率など)について、それぞれのホームページに掲載しています。これらを利用して、候補となる病院のがんの診療実績(診療患者数)を比較検討しましょう。
予後および治療のゴールについて確認しておく
がんの治療を受けるうえで大事なことは、予後についてある程度理解し、治療のゴール(目的)をはっきりさせることです。そして、それに向かって患者さんと主治医がともに努力することです。
ときどき、お互いのコミュニケーション不足から、主治医の考えている治療のゴールと、患者さんの期待する治療のゴールが食い違っていることがあります。
例えば、患者さんは「がんが完全に治ること」を期待しているのに、主治医は「数カ月間の延命」を想定していることがあります。このような場合、少しずつ話がかみ合わなくなったり、主治医に対する不信感が芽生えたり、あるいは治療自体がうまくいかなくなったりすることもあります。
ですから、治療を開始するにあたり、治療後の予想される経過について、主治医に聞いてみましょう。もちろん、治療してみないとわからない場合もあると思いますが、おおよその予測について主治医の考えを聞きます。
そのうえで、主治医と治療のゴールについてよく話し合う必要があります。がん治療のゴールは、大きく根治、延命、緩和の3つに分類されます。がん治療のゴールは、がんのステージや患者さんの年齢、体力などを総合的に考えて判断され、患者さんの価値観、生き方や社会背景なども関係してきます。
一般的には、可能であればまず根治を目指すことから始まり、延命、そして緩和という順番になります。あるいは、生活の質を重視し、積極的ながん治療は一切受けない(無治療)というゴールもあります。
最近では、がん治療の初期の段階から緩和医療を導入したほうがいい(生活の質が高まり、生存率も改善することがある)という考え方もありますので、必ずしも順番通りでない場合もあります。
おそらく多くの患者さんにとって、第1のゴールは「できるだけの治療を受け、がんの根治を目指す」ことだと思います。一般的に、早期がんの場合は、根治を目指すことができます。
一方、ある程度進行したがんでは、(がんの種類やステージによって差がありますが)根治が難しくなります。また、進行がんに対して根治を目指す場合は、ひとつだけの治療では不十分なことが多く、いくつかの治療(例えば手術+抗がん剤)を組み合わせるのですが、その分、体への負担も大きくなります。
根治が困難と判断される場合には、完全に治る可能性は低いものの、治療によって少しでも長く生きること(延命)を目標にすることもあります。まずは根治をゴールに設定して治療を始め、再発・転移により根治が難しいと判断される場合、ゴールを延命に変更することもあります。
がんがさらに進行し、治療による延命効果が期待できない場合には、がんに伴う痛みなどの症状を緩和することを目標にします。このように、がん治療のゴールは治療中に変わってくることがありますので、常に主治医とよく話し合い、現時点でのゴールについての認識を共有する必要があります。
がん治療の目的を決めるうえで重要なのは、自分の人生観や価値観、「自分がどう生きたいか」ということです。
つまり、「できるだけの治療を受けて、1日でも長生きしたい」のか、あるいは「きつい治療は極力避け、生活の質を重視したい」のか。そういった考え方を尊重すべきなのです。
そして、最終的にがん治療のゴールを決めるのは、主治医でも家族でもなく、患者さん自身です。主治医に自分の考えをしっかりと伝え話し合い、後悔のない治療のゴールを決めてください。
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