「ルフィ事件は氷山の一角」「わずか5万円が地獄の入り口に…」 元刑事が激白《汗をかかずに金を得ようとした若者たち》の悲惨な”末路”
翌朝、指定駅に集合するよう指示される。この段階で彼は異変を察し、「降りたい」と訴えた。だが「やらなければ実家に放火する」と脅された。これで、彼の逃げ道はもうなくなってしまったんや。
向かった先は、すでに掛け子(被害者に電話を掛け、金銭やカードを騙し取る役割)に騙された高齢女性の家やった。
キャッシュカードを受け取り、実印を求める。女性が印鑑を取りに行った隙に、カードを偽物とすり替え、暗証番号まで聞き出す。これは単なる詐欺ではなく、キャッシュカード詐欺盗(窃盗罪・刑法第235条)という特例に該当する。
「50万円以下なら咳1回、それ以上なら2回」
続いてATMで現金を引き出す指示が出る。現場には指示係が待機し、「50万円以下なら咳1回、それ以上なら2回」と合図を決めていた。現金を手にした後はコインロッカーに預け、ロッカーのQRコード画像を送信する。後で別の運搬役が回収する仕組みやった。
この手口の源流は、実はオレオレ詐欺にある。1992年施行の暴力団対策法(暴対法)の影響で資金繰りが苦しくなった暴力団が、新たなシノギとして始めた。他の組織も倣(なら)い、全国に詐欺グループが広がった。
やがて闇金やオレオレ詐欺は警戒され、通用しにくくなった。暴力団は強盗、いわゆる「叩き」(強盗罪・刑法第236条)に手口を変えた。今では半グレや元暴力団員、中国系マフィアが中心となり、匿名・流動型の「トクリュウ」グループが跋扈(ばっこ)している。「ルフィ事件」でその存在が知られたが、氷山の一角にすぎない。
現在は中国系グループが指揮を執り、日本の捜査権が及ばず摘発は難しさを増している。拠点も日本からフィリピン、カンボジア、ミャンマーへと移動した。ミャンマー国境地帯は無法地帯と化し、犯罪者が世界中から集まっている。
闇バイトが広がった背景には、SNSの普及がある。X(旧Twitter)やInstagramを通じて、手軽に仕事探しができる時代になった。だがそこには、甘い罠が無数に潜んでいる。
警察庁生活安全企画課長も異例の広報を行い、「闇バイトに応募してしまった場合も相談してほしい。警察が保護する」と呼びかけた。42年間現場にいたワシも、犯人側への保護要請を見たのは初めてのことや。
少しでも「おかしい」と思ったら、全国共通ダイヤル「#9110」に相談してほしい。そして、SNS上では個人情報を軽々しく渡したらあかん。汗水を流さず得られる高収入など存在しないんやから。
特にニュースを見ない若者が闇バイトに応募する例が目立つ。彼らは、強盗殺人(刑法第240条)を犯せば死刑または無期懲役になるという基礎知識すら持ってなかった。
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