有料会員限定

禁じ手だった「備蓄米放出」で価格が下がる理由とは?「減反廃止と直接支払い」で万事OKとなるほど甘くはない農業の現実…荒幡克己教授に聞く

✎ 1 ✎ 2
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

――1割の不足で、価格が倍にまではねあがったのですか。

価格が敏感に反応したのは、業務用米が増えたことで不足感が強まりやすくなったことが大きい。

近年、外食チェーンをはじめ業務用米の需要が4割まで増え、家庭用は6割に減った。外食チェーンはコメを切らせば死活問題だから、ゆとりを持って在庫を確保するために高価格もいとわず動く。特に寿司や牛丼では秋に新米が出回っても翌年の2、3月までは古米を使うため、収穫時の1年半先の分まで在庫を確保しなければならない。

そもそも卸業者は、不足の懸念があれば、取引先向けの在庫を防衛的に持とうとする。近年の業務用需要の増加とその新米切り替え時期の遅さにより、先行きの不足感の中では、かつて以上に在庫欠乏への不安が大きくなっているといえるだろう。

不足量は正確にわからないが、60万トン程度の不足で価格がこれほどまで跳ね上がったことは想定外だった、と多くの関係者が指摘している。不足感が強い中、新米が出回り始める9月までは、備蓄米放出で不足「量」を埋めるほか手段はなかった。

現行の法制度上は「ありえない」備蓄米放出

――3月以降、江藤拓前農相が30万トンの備蓄米放出を行いましたが、価格は下がりませんでした。

江藤前農相は備蓄米を放出するかどうか胃に穴があくほど悩んだというが、同情の余地がある。というのも今の法制度上、備蓄米放出は大幅な供給不足の時に限られ、需給の微調整や価格変動には対応しないこととなっているからだ。

次ページ効かない在庫操作、効くほどやれば財政破綻
関連記事
トピックボードAD