「味が値段に見合ってない」「さすがに高い」との声もあるが…。ココイチ「驚愕の3280円カレー」が示す“残酷な現実”

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それまで、ココイチはどちらかといえば値上げをしても客足が離れず、「値上げの優等生」と見られていた側面もある。

企業調査の分析広報研究所・小島一郎チーフアナリストは日経ビジネスの取材に対して「ココイチは外食業界の中でも先んじて値上げを実施してきたが、消費者側が上昇する価格に追いつくことができなくなっているのではないか」と述べている(ココイチ、カツカレー1000円で遠のく客足 限界近づく外食の値上げ)。

相次ぐ値上げと高付加価値路線に対し、「この価格ならココイチ行ってもいいな」と考える層の離脱が始まっている可能性があるのだ。

ココイチは今、変化している最中だ

以前、私が上記のようなココイチの状況を書いたとき、ネット上では「ココイチはもう庶民の味方ではなくなった」というようなコメントが相次いだ。

その数はあまりにも多く(Yahoo!のコメントでは5000件近くのコメントが集まっていた)、少なくない人がココイチの値上げに対して思うところがあるんだな……と感じた。

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ただ、だからといってココイチがよくない、と言うつもりはまったくない。むしろ、これまでのように「少々安めで客を多く取って利益を上げる」モデルから「客単価を上げて利益を取っていく」モデルへと方向転換をしようとしているのが現在のココイチだろう。

「薄利多売」から「厚利少売」モデルへの進路変更だ。現に利益は上がっているのだから、これは企業の選択として間違っているものではない。

企業である以上、利益を求めるのは大事なことだ。庶民の味方でい続けて儲からないなら、「ココイチに1000円? 高すぎ」と言う消費者は、もう過去に置いていくしかないのだ。

大事なのは「選択と集中」。置いて行かれる庶民にとってはなんとも残酷な現実だが、そもそも物価高騰の昨今だし、とりわけ米の価格上昇は誰もが知るところだ(もちろん、高くなることと、高級化路線に見合う商品を提供できているかは別の話だが)。

そんなココイチの"大転換"を顕著に表しているのが、今回レポートした「ホロ肉ドカンとガーリック&ペッパーカレー」なのではないか。庶民にとって、この肉塊はもはや「夢の存在」になったのか。

「庶民的カレー店」の今後の姿が、その肉塊の中に浮かび上がっているのかもしれない。そんなことを感じながら食べたカレーは、いつもより少し辛い気がしたのであった。

【もっと読む】6月末に「都内で大量閉店」の天下一品。久々に訪れると味は昔のまま…なのに、昨年にも多数の閉店が。一体なぜ「縮小」が続いているのか? では、都内で閉店が続くラーメンチェーン「天下一品」縮小の背景について、チェーンストア研究家の谷頭和希氏が詳細に解説している。
谷頭 和希 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家

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たにがしら・かずき / Kazuki Tanigashira

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。1997年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業、早稲田大学教育学術院国語教育専攻修士課程修了。「ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第三期」に参加し宇川直宏賞を受賞。「東洋経済オンラインアワード2024」でMVPを受賞。著作に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』 (集英社新書)、『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)、『ブックオフから考える 「なんとなく」から生まれた文化のインフラ』(青弓社)がある。テレビ・動画出演は『ABEMA Prime』『めざまし8』など。

X:@impro_gashira

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