「司法まで掌握することになれば独裁だ」、韓国で台頭する《怪物独裁国家》誕生の危ういシナリオ

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大統領選挙前にオンライン上で拡散されたのは、刑務所に入れられたユン前大統領とイ大統領が互いににらみ合っているフェイク動画だった。大統領選挙中、「国民の力」のキム・ムンス候補側は、イ氏が大統領になれば「怪物独裁国家になる」と攻撃していた。その理由の1つに、法治主義の崩壊を挙げていた。
    
イ大統領は5つの裁判で係争中だ。公職選挙法違反に関しては一審で懲役1年、執行猶予2年の有罪判決が出たが、3月末の控訴審で無罪となった。最高裁での判決は大統領選挙後に開かれるとみられていたが、異例のスピードで審理が行われ、5月1日に判決が出た。

最高裁は次期大統領の可能性のある人物を裁判するという理由から、異例の12人の裁判官で裁判を実施。「控訴審の判決は誤っている」として差し戻しとなった。12人の裁判官のうち10人が賛成しており、「事実上の有罪判決」といわれた。

相次ぐ法改正で司法の掌握を画策

これに猛反発したのが「共に民主党」だった。「国民の主権を侮辱する政治介入」(同党の中央選挙対策委員会総括委員長)と断じ、チョ・ヒデ最高裁長官を弾劾するとしたが、世論の非難を浴びて、取り下げている。

一方で「こうした結果は最高裁にエリート裁判官しかいないためだ」とし、視野を広げるために民間などの幅広い採用を行い、裁判官を14人から100人に増やす裁判所組織法の改正案を出した。だが、こちらも世論からの反発をくらい、30人の増員にとどめる形で公約に盛り込んだ。

最高裁の裁判官は最高裁長官が推薦し、国会の聴聞会を経て、大統領が任命する。しかし、その過程を変え、裁判官の大幅な増員によってイ大統領が任命した裁判官の割合を一気に高め、司法まで掌握するつもりかという強い懸念が出ていた。

しかし、イ氏が大統領に就任した6月4日、国会の法制司法委員会は、最高裁の裁判官を増員する裁判所組織法の改正案を通過させた。現在14人の最高裁裁判官の定員を1年に8人ずつ、2年間で16人を増員し、30人にするというものだ。

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