「好んで西武池袋線に住む人はいない」のは本当か 池袋の文化度は「東急系の渋谷」に負けていない

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こうあからさまに言われると、いろいろ言いたくなる。西武池袋線はマンガ家と縁が深い。若き日の手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫らが住んだ「トキワ荘」が椎名町駅近くにあり、彼らがこの沿線に住んだおかげで、マンガ家がマンガ家を呼んだ。竹宮惠子、萩尾望都の大泉学園、あるいは高橋留美子の東久留米などは有名だ。

椎名町には、自宅を出ないという生活スタイルがあまりに特異で、それが映画にもなった画家・熊谷守一をはじめとして、多くの芸術家が住んだ「池袋モンパルナス」と呼ばれた居住区もあった。「どうだ」と言いたくなる文化度ではないか。

さらに、西武池袋線には団地や住宅地にとどまらず、いくつも遊園地があったり(としまえんは閉園してしまったが)、埼玉西武ライオンズの本拠地が存在する。東京近郊の鉄道沿線に、プロ野球の一軍の試合を恒常的におこなう球場があるのは貴重だ。おまけに最近は東横線・みなとみらい線と直通になったので、横浜スタジアムにも乗り換えなしで行けるようになっている。

糞尿を運んでいたのは西武池袋線だけではない

ちなみに、これは戦前の話だが、西武新宿線の上井草には「東京セネタース」(系譜的には北海道日本ハムファイターズの前身)のホームグラウンドがあった(現在は区営の野球グラウンド、プロ野球は開催できない)。といろいろ挙げることはできるが、果たしてこれが反論になっているかというと、微妙であることを認めざるをえない。

西武池袋線の前身の武蔵野鉄道が、戦前と戦後直後、都心から人間の糞尿を郊外の農地へ運んでいたことがあるため、「汚穢(おわい)電車」などというありがたくない蔑称を与えられたことも、マイナスイメージに一役買っているかもしれない。なら、そんなことを書くなと言われるかもしれないが、歴史はきちんと伝えるべきだ。都心と郊外をむすぶ糞尿の循環ネットワークは、いまだったらSDGsの先駆けだ、くらいのことを言えばいい(鉄道で運ぶのはどうかと思うが)。江戸時代から市街地と郊外は糞尿でつながっていて、荻窪あたりでもそういう話はいくらでもある。西武沿線特有のことではないのだ。

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