
こうした“三者関係の雇用”を一部合法化する過程では、一定のルールも設けられたものの、リーマンショック後の大量雇い止めやスキマバイトの現場を取材する限り、十分とはいいがたい。
働く側には「気軽に働ける」「すぐ稼げる」といったメリットもあるようだが、人材派遣やスキマバイト市場の急拡大をみるにつけ、企業側のうまみはそれ以上に大きい。こうした働かされ方の増加は、現代社会における貧困の原因のひとつなのではないか。
ナオキさんが転職を考えなかったワケ
それにしてもこの間、ナオキさんは転職を考えなかったのか。
私の問いかけに対して「ダブルワークを始めてからは家計的に一息ついたので」と多くを語らなかったが、出版不況の深刻さを予想することや、慣れ親しんだ業界を離れる決断は容易ではなかったのかもしれない。
加えてナオキさんは、数年前から全国のアルバイトや契約社員らが個人で加入できる労働組合に入り、それぞれの勤務先に10%以上の賃上げなどを求める「非正規春闘」に参加している。
自身の職場は賃上げこそゼロ回答が続くが、有給休暇などの福利厚生をめぐっては、労組を通して得た成果もある。

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