京王線｢グリーン車｣からライナーまで名車の軌跡　実は全国でも超レアな｢軌間｣、知られざる廃線も

同じ経緯で京急や京成もかつては1372mm軌間だったが、いずれものちに標準軌の1435mmに変更している。大手私鉄の鉄道線では京王だけがそのまま残り、その結果として京王線と相互直通する都営地下鉄新宿線も1372mm軌間で建設された。

国内で現存する1372mm軌間の路線は京王線と都営新宿線のほかは路面電車（軌道）の都電と東急世田谷線、函館市電であり、長編成の電車が走る鉄道としては世界的にも非常に珍しい。この経緯は鉄道ファンは周知のとおりだが、京王線沿線住民には意外に知られていないようだ。井の頭線は路線成立の経緯が異なるため、1067mm軌間である。

京王相模原線を走る都営地下鉄新宿線の10-000形（撮影：南正時）

「玉南電鉄」の面影

だが実は、現在の京王線にあたる区間も1067mm軌間だった時代があった。

京王線は1923年に調布から府中まで開業したが、この先八王子までは乗り換えを要することになった。1925年に府中―東八王子（現在の京王八王子）間が玉南（ぎょくなん）電鉄によって開業したが、同鉄道は1067mm軌間で建設されたためだ。この鉄道は地域の出資を受けて創設され、高幡不動の境内には創設者たちの記念碑が残っている。

開業時は玉南電鉄の区間だった百草園付近を走る京王線の電車。田園風景や山は変わらない（撮影：南正時）

玉南電鉄は開業後わずか1年8カ月で京王と合併することになり、軌間も1372mmに統一されて新宿―東八王子間の直通運転が実現した。短命だった玉南電鉄だが、その面影は聖蹟桜ヶ丘から百草園、高幡不動あたりに色濃く残り、数少ないが遺構も見ることができる。