罰ゲーム化する管理職が知るべき「理想の上司・部下」関係のつくり方――良かれと思った部下とのランチや飲み会がNGな理由
うちのメイン顧客は企業の法務部門や法律事務所で、法律に関しては全員プロ中のプロだ。
そんな専門家のなかには、法律問題をわかりやすく、そのぶんいくらか乱暴に伝えるYouTuberたちに眉をひそめている人たちも多い。かくいう僕自身もその1人だった。
そんなこんなで少し疑問を感じつつも、餅は餅屋で川田さんを信頼して任せたキャンペーンは、どうやらうまくいっているようだった。サービスの認知度が大幅に上がり、キャンペーン前後で逆転して競合2社を上回ったという。
ただ、営業担当役員の本間さんが、問い合わせの数がまったく増えていないと指摘すると、川田さんからは潮が引くように表情が消えた。
認知度が上がってから問い合わせが増えるまでには、顧客の行動を考えるとタイムラグがある。僕たちにそう言って聞かせる間、手元のPCをじっと見る川田さんのフラストレーションは、ここに至ってはもはや意思表示といってよかった。
本間さんの指摘はまったく批判的ではなく、どちらかというと、おどけた独り言に近いものだった。ただ、川田さんの反応は意外というわけではなかったし、その出所も僕にはよくわかっていた。僕ら経営チームの、マーケティングへの理解不足だ。
就任早々、僕たちが基本的な用語やフレームワークも理解していないと悟った川田さんは、経営チーム全員を対象に半日のマーケティング講座を実施してくれた。
有名な業界誌が主催する講座で講師を務めることもあるという、川田さんの説明はさすがにわかりやすかった。会社が必要としていたのはまさにこの人だ。その時の僕は、そんなふうに川田さんの知識を重んじるスタンスを、大方前向きにとらえていた。
一方、半日の講座を1回受けただけでマーケティングが理解できたら、そもそも高い給料を払ってマーケのヘッドを雇う必要はない。また、自らお金を払って聞きに来ているわけでも、彼女の部下でもない僕たちが、1回ですべてを吸収しようと必死に講座に食らいつく理由もない。
そんなわけで、僕たちのマーケティングの知識は川田さんが期待するほどには上向かず、その後お互いノーアクションのままでは、そのギャップが埋まることも当然ないまま迎えたのが、まさに先ほどの一幕だった。
心のこもった返事に安心したが…
認知が上がってから問い合わせが増えるまでにはタイムラグがある。
だとしたら、そのタイムラグはどれくらいなのか。今のペースだと、最終的にはどの程度の問い合わせ増が見込めるのか。僕のなかにもそんな疑問やフラストレーションがわだかまってはいたが、その場は一旦フォローに回ることにした。
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