3カ月以上待たされた挙句に「当行で融資は難しい」 頼みの綱切れ、配偶者から”1000万円借金”・・・老舗「和装小物問屋」が破産した悲しき顛末

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その後も営業段階から赤字が続いていた。しかし、2023年5月に新型コロナウイルスが5類に移行したことで人流が徐々に回復し、国内景気も小売りやサービス業を中心に上向きはじめた。当社の業況も底打ちの兆しが見られたが、依然として厳しい状態には変わりなかった。コロナ禍で業況が悪化した得意先からの売上金回収が滞っていたこともあり、資金繰りに余裕はなく、同年10月以降に取引金融機関に対して新たな融資打診に踏み切った。

金融機関からは煮え切らない回答が・・・

数カ月後の2024年1月下旬、金融機関の担当者から連絡が入った。融資可否の結論がようやく出たのかと思い対応すると、担当者からは“意外な答え”が返ってきた。「今月末で退職するので(融資については)後任に対応させます」――。

それから2週間あまり、新たな担当者にも「業務引継等」を理由に対応してもらえなかったという。いざ話し合いが始まると、新担当が口にしたのは「当行で融資は難しい。政府系金融機関に融資可能か確認してみます」というものだった。さらに数週間が経ち、翌2月に出た結論も「否」。以前から赤字決算が続いており、融資は難しいとの回答だった。

このため、やむなく既存借入金の1年間の返済猶予を要請した。取引金融機関の新担当からは「今後融資はできなくなりますが、それでもよろしいですか?」と聞かれたが、背に腹は代えられなかった。元本返済をストップし、利息のみの支払いに切り替えて急場をしのいだ。

この間、当てにしていた融資を受けられず、資金ショートしかけた場面もあった。その際、代表は配偶者から1000万円の借金をして窮状を回避したという。融資打診から数カ月あまり、会社側にとっては時間ばかりを空費した感が否めなかった。

2025年に入ると、仙台営業所の閉鎖や人員削減などリストラに踏み切った。当座の資金繰りを緩和すべく、従業員の協力を得て給与支給日を遅らせもした。しかし売上金の回収は遅々として進まず、徐々に資金も枯渇していった。収支の赤字が長期にわたって続くなかでこのまま営業を続けても、資金繰りが早晩行き詰まることは明らかだった。こうした状況を取引金融機関に説明したところ、4月初旬に当座預金が出金停止となり資金ショート。先行きの見通しが立たなくなり、負債1億5900万円を抱えて東京地裁へ自己破産を申請した。

業務終了を発表した
4月10日、自社ホームページ上に「業務終了のお知らせ」をアップした(写真:中越公式ホームページより)
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