「正社員vs非正規」「管理職vs一般社員」、職場に潜む“見えない壁”の正体。《何を考えているのかわからない》と心の距離は広がるばかり

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こうした働き方の当たり前は、子育てやいろいろな事情を抱えている女性たちからすると、無理を強いられることになる。

また、最近は減ったとはいえ、女性は補佐的な仕事をしてもらうほうが本人にとっても良いという考え方がどこかにある人もいる。女性は管理職やリーダーの立場は望んでいないと、男性の経営層が勝手に決めつけていて、実質的に仕事の範囲を狭めてしまっていることもある。

こうした女性だから、男性だからという目線で線を引いてしまうアンコンシャスバイアスが組織全体になんとなく広がっている。日々の言動の中で見え隠れしてしまう。そうした考え方、価値観が、互いへの本当の理解を妨げてしまいます。

さらに世代間の違い。いつの時代も「最近の若手は……」「おじさんは古い」など、互いの考え方や振る舞い方、接し方を見て、理解できないという論調は出てきます。

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特にベテラン社員、管理職層からすると、最近の若手がすぐに「この仕事は何のためにやるんですか」「なぜわたしがやらないといけないんですか」「マニュアルとか手順書があるなら、きちんと最初に教えてください」

「無駄なことはしたくないので」「残業はしないので時間になったら帰ります」などと言い、周囲の状況に関係なく、自分は自分なのでという振る舞いをされると、戸惑ってしまい、どう返してよいのかわからなくなるという話がよく出てきます。

「目的や意味を問う前に、まずはやってみることが大事」「マニュアルや手順書よりも、自分で試行錯誤しながら実地で覚える方が身につく」「一見無駄なことでも、それを積み上げることでいろいろなことが見えてくる」「仕事の責任感が何よりも大事、残業してでもやり切るのが当たり前」……。

こんな価値観で育ってきた世代からすると、若手の言葉が甘えているように聞こえ、自分のことしか考えないわがままのように聞こえてしまう。でもそこで強く言えない、否定できない。それこそパワハラだと思われたらどうしようと思うと、曖昧にしか返せない。

そのうち、受け答えするのが面倒になり、難しい若手とは距離を置こうとする。こんな上司も珍しくありません。

気持ちを押し殺して働き続ける

若手だけでなく、50歳後半の役職定年者や60歳になった嘱託社員、一見やる気をなくしたように見えるベテラン社員など、世代が違うからどこか気楽に話せず、気持ちを聞けない人たちが職場にいると、周囲も腫れもののように扱ってしまう。本人も孤独感を募らせ、本当の気持ちを押し殺して、黙って働き続ける。

こうした世代の違い、世代による境遇の違いが、どこかで理解し合えない、触れられないという意識を生んでしまうと、そこにまた見えない壁ができ上がってしまうのです。

次の記事→実はじわじわ広がっている「静かなる職場の分断」。「管理職になりたくない」社員が増加、その背景にあるもの
高橋 克徳 ジェイフィール代表取締役 コンサルタント 武蔵野大学特任教授

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たかはし・かつのり / Katsunori Takahashi

1966年生まれ。一橋大学大学院修士課程終了、慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。野村総合研究所、ワトソンワイアットを経て、2007年「組織感情とつながり」を機軸とするコンサルティング会社ジェイフィールを共同で設立。関係革新、仕事革新、未来革新をテーマに、互いの感情と向き合い、思いを重ね、未来に踏み出す組織づくり、リーダーづくりを支援している。2013年より東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を兼任。ご機嫌な職場づくり運動実行委員長。組織や職場をめぐる社会課題をどう解決するかという視点で、著作・講演活動を行っている。『不機嫌な職場』(共著、講談社)は28万部を超えるベストセラーとなる。その他、著書多数。

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