「正社員vs非正規」「管理職vs一般社員」、職場に潜む“見えない壁”の正体。《何を考えているのかわからない》と心の距離は広がるばかり
管理職になれば残業代も出ない、会社のために自己犠牲もやむなし。それだけの責任を担う人たちなので、頑張ってくださいというのです。
どれだけの人がそこでやる気が出たのでしょうか。
中間的なプロセスもなく、自分の仕事を抱えたまま組織成果に責任を持つ人。それを補佐する人は誰もおらず、孤立して、抱え込んで、残業代も出ず身を粉にして働く人。
部下から見ると、きちんと向き合ってくれない、しっかりフォローしてくれないという不満もありながらも、その忙しさ、負担の大きさもわかる。
そういう管理職を見て、若い人たち、女性たちは特に、管理職になりたくないという。自分たちとは違う人、そこに触れないようにした方がよい人。そう思って、線を引いてしまう。
みんな目の前のことに追われている
次に起きたのは、働き方の違いによる見えない壁です。
働き方改革の流れの中で、時短勤務の人たちも増えていく。特に小さな子どもをもつ女性たちにとっては、保育園へのお迎え時間を考えるとそうせざるを得ない人もいる。
でも、実際にそうした苦労や大変さが、まわりの人に見えているわけではない。いつも挨拶もままならないまま、お先に失礼しますと帰ってしまう。
すると周囲から不満が出る。なぜその分の仕事を周囲がカバーしなければならないのか。なぜあの人だけ優遇されているのか。でも本人に直接言うことも違うと思い、言わない。そうしたモヤモヤがまた互いの距離感を広げてしまう。
誰もが子育てや介護、本人の健康問題などで、時短で働くなど柔軟な働き方をしなければならなくなるかもしれない。だから今、そのフェーズにいる人を助けることは将来の自分に返ってくる。
そう思えば、自然と受け入れられるものなのかもしないのに、みんなが目の前の仕事に追われ、短期成果を求められる中で、そんな先のことは考えられない。
さらに目の前の人と長い付き合いになる人なのかどうかもわからない。そこまで深い関係になれない人もいる。そうなるほど、働き方や処遇の違いが不公平だと感じるようになる。
コロナ禍になって、オンラインで働く社員とリアル出社社員という違いも生まれた。設備やシステムが必要な仕事をする人たちは、実際に会社に行かなければ仕事にならない。そういう人たちと、自宅のパソコンで作業し、メールで指示をすることで仕事が回っていく人たち。
特に今まで現場に行って直接やり取りしていた人たちほど、自分たちがメールだけでやり取りをしていることに申し訳ないという気持ちになるのだと言います。だからつい遠慮してしまい、コミュニケーション自体が減ったという人もいました。
こうした働き方の違いが生み出す見えない壁は、互いの背景や事情がわからない中で、相手への不満も遠慮する気持ちも口にできない人たちを増やしてしまう。触れないまま表面的なやり取りになってしまうことで、その距離感をさらに広げてしまいます。
そうした中で、根幹にある価値観の違いが見え隠れして、それがまた互いに踏み込めない関係性をつくっていく。そうした現象も起きています。
1つ目は、ジェンダー間、男女間の違い。特に企業社会の当たり前は、男性がつくってきたもの。仕事中心、会社中心で考えることが当たり前。自分の仕事は自分が責任を持ってやり切るのは当たり前。できなければ残業してでも最後までやり切るのは当たり前……。
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