実はこの作品、世界的なゾンビブームのきっかけを作ったアメリカのクリエイター集団とタッグを組んで制作したことを売りにもしています。フジテレビは過去にアメリカのヒットドラマ「SUITS/スーツ」をリメイクした実績はあり、韓国や中国、東南アジアのメディア企業と関係性を強めてはいるものの、アメリカと共同制作したのはこれが初めてです。
フジテレビが組んだ相手は、アメリカ・ロサンゼルスを拠点にゲームやコミックIPをグローバルにビジネス展開することが得意なスカイバウンド・エンターテインメントというエンタメ企業です。代表タイトルには「ウォーキング・デッド」の原作が挙げられます。今回の「HEART ATTACK」もスカイバウンドのクリエイターが手掛けたコミックを原作としています。
実写ドラマ化にあたって、フジテレビが制作主導権を握りながら、ドラマ脚本作りは共同で取り組んだという制作過程は興味深いところ。本作のプロデューサーの一人を務め、フジテレビIPプロデュース部の加藤裕将氏に直接話を聞くと、「国際共同制作は文化や言語の違いがある中で意思疎通を図るためにそもそも時間がかかるものですが、脚本作りなど例外なく大変ではありました」と、苦労を言葉にしていました。調整を重ねた末に、完成するに至った現場の様子が想像できます。
幸いにも出演した役者たちがこの新しい試みに理解を示し、撮影現場は順調だったことも語っていました。何かにチャレンジするということはモチベーションを上げる効果はあるのかもしれません。
フジテレビに足りないものとは?
加藤プロデューサーの言葉を借りると、日本では知られていないアメリカの原作でSFものという企画の内容そのものが「地上波では絶対に通らないもの」だそう。地上波のドラマはいまだに日本でヒット実績がある漫画原作ものが多く、ジャンルについても手堅い医療や刑事ものに走りがちです。そんな事情があってか、本作は自局の配信ドラマとしてスタートしています。

相手のスカイバウンドにとっても日本と組むのは初めてということで未知数だったわけですが、「ウォーキング・デッド」の成功体験があったことが今回の決断の要素として大きかったのかもしれません。B級扱いだったゾンビものを世界的メジャーに格上げさせたことに貢献した自負があるのだと思います。新しい挑戦の積み重ねによってチャンスを掴んだ多くの海外メディア企業の話から想像できることです。フランス・リール3月25日から27日(現地時間)まで開催されたドラマ祭「シリーズ・マニア・フォーラム」では本作の世界展開を狙う動きも見られました。
言うなれば、渦中にいるフジテレビと怖いもの知らずのスカイバウンドという良い組み合わせではあったのです。期待があったからこそ、残念な部分が目立ちます。加藤プロデューサーは冷静に受け止めています。
「失敗も含めて、世界基準のドラマ作りとは何なのかということが理解でき、日本に足りないもの、フジテレビに足りないものがよくわかりました。意味のある経験になり、次に必ず活かしたいです」
失敗の繰り返しは致命的となる状況ですが、生命線である番組コンテンツで今こそ攻める価値はあると思います。

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