「スタバは出店しなくて正解」“行田市への出店中止”が《賢明すぎる判断》であったワケ…スターバックスにとっては「損して得取れ」の結果となる必然

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行田の話に戻そう。行田市民にしてみると、鳥取県民ほどスターバックスに希少価値は感じないとは思うし、出店のPR効果も少ないようには思う。それでも、単純に他地域の事例と比較することはできないが、地元の公園へ出店すれば貢献は大きかったのではないか。

駐車場が減るという問題に対しても、行田市は駐車場の拡張を行うことを説明しており、デメリットを減らす努力はしているように見受けられる。

水城公園
スタバの出店を予定していた行田市の水城公園(画像:同市公式観光サイトより)

「行田への出店中止」が賢明だった理由

スターバックスジャパンは、本件に関して以下のように表明している。

すべての出店において、地域社会の一員として寄り添い、共に成長することを大切にしております。本件事業においても訪れる方々にとって安心して集える場を提供することを目指しておりましたが、地域の皆様の間で意見の相違が続く現状では、この理念を十分に実現することが難しいと判断いたしました。

たとえ、出店に反対している人が少数派だったとしても、いったん出店を中止したことは、スターバックスの経営理念に沿ったものであるし、PR戦略から見ても賢明であった。

今回の件で、スターバックスの企業姿勢は十分に伝わったと思うし、行田市民の多くが出店を望んでいるのであれば、その動きは再び高まるだろうし、市内の別の場所での出店もより行いやすくなるだろう。

「損して得取れ」という言葉の通り、今回の出店中止は、短期的には機会損失になったかもしれないが、長期的にはスターバックスのブランドイメージの維持と、今後の出店展開を促進するという点では、間違っていない判断であったと思う。

本音を言えば、スターバックスのみでなく、日本の飲食チェーンが公共施設で同様の展開をしてほしいと思うし、そのためにスタバのような巧みなPR手法をマスターしてもらいたいと願ってもいる。

西山 守 マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

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にしやま まもる / Mamoru Nishiyama

1971年、鳥取県生まれ。大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授に就任。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書に単著『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、共著『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社)などがある。

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