「船井電機突然の破産」スポンサーや社長が相次ぎ交代した上に創業家と経営陣とのバトルも勃発、その真相と顛末
そこで上田氏は2021年に船井電機の定期預金を担保としてりそな銀行から180億円を借り入れ、LBO(レバレッジドバイアウト)の手法で船井電機を買収する。
新体制の下で心機一転、新たな船出となるはずだった。だが、2023年4月に脱毛サロン大手ミュゼプラチナムを買収したことをきっかけに歯車が狂い始める。
ミュゼを買収した理由について上田氏は、「パナソニック出身の柴田(雅久)会長から美容家電は粗利率が高いと聞き、ミュゼを使って進出しようと考えた。当時、テレビ事業で毎年70億〜80億円の赤字が出ており、その穴を埋めたかったからだ」と話す。
ちなみにこの際、買収資金として横浜幸銀信用組合から33億円を借り入れており、これについても船井電機が債務保証した。
流出資金は300億円
だが、上田氏の想定どおりには進まなかった。「買収した当初は順調だったが、2023年10月に導入されたステルスマーケティング規制によってミュゼの業績が急激に悪化してしまった」(上田氏)。
結果、ミュゼは広告費を払えなくなり、22億円の未払いが発生。未払金は、船井電機・ホールディングスが連帯保証をしていたため、船井電機の信用状態も悪化し、担保として入れていた定期預金180億円がりそなにごっそりと回収されてしまったのだ。
破産事件記録によれば、ミュゼ買収などで船井電機から流出した資金は、実に約300億円に上る。つまり再建はおろか、多額の資金を流出させる事態に陥ってしまったわけだ。揚げ句に船井電機は大赤字に転落。上田氏は、買収から1年も経っていない2024年3月、ミュゼの株式売却を決断する。
売却先は、上田氏とかねて親交があったという公認会計士の中村肇氏が紹介してきたKOC・JAPAN。飲食店でのクーポン事業などを手がける会社だ。
売却によって止血できると思いきや、不可解なことが起きる。通常、株式を譲渡すれば借り入れの保証も移行されるはず。ところが、ミュゼ売却後も横浜幸銀からの借り入れに対する船井電機の保証は解除されておらず、簿外債務として残ってしまっていたのだ。
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