年収ランキングの常連で"254億円寄付"でも話題になった「キーエンス」はそもそも何がスゴいのか あえて"キラキラしない"経営哲学の神髄
ファブレスというビジネスモデルを採用した理由は主に次の3つだ。
② 自社工場を持ってしまえば、新商品を製造するたびにラインの再編成を強いられる。これが生産性の悪化やコスト高を招く。生産体制を意識するあまり、柔軟な企画が生まれなくなる
③ 世界情勢や市場の変化に左右されず、付加価値の高い商品を大量生産するのに適している
オムロンの立石義雄・元会長が生前、「なぜ、キーエンスに勝てないのか」と口惜しく思っていた。オムロンのほうが取扱製品の幅が広いという点もあるが、ファブレスというビジネスモデルを使っているか否かが売上高利益率の差に表れた1つの大きな要因と考えられる。
「企業は社会の公器である」というオムロン創業者・立石一真氏の理念のもとに、身障者が働ける工場(オムロン太陽)まで設立した「良心経営」は高く評価すべきだが、『論語と算盤』の算盤ではキーエンスのほうに軍配が上がった。
「全世界当日出荷」を可能にする営業力
キーエンスは世界46カ国250拠点で事業を展開している。多くのグローバル企業が採用しているような代理店、販売会社経由ではなく、顧客との距離を短くしたグローバル直販体制「グローバルダイレクトセールス」を展開。顧客ニーズをいち早くくみ取れる体制を構築した。
専門知識を持ったキーエンスの営業担当者が顧客の生産現場へ足を運ぶ。そして、悩みを聞き、隠れたニーズを見つけ、即座に課題を解決する。この営業手法が顧客満足度を高め、リピーターを増やす要因になっている。
「グローバルダイレクトセールス」は、キーエンス製品を世界のデファクト・スタンダード(事実上の標準)にするうえでも貢献している。
実は、同社が発売する製品の7割は世界初、業界初。当然、初めて目にした顧客は戸惑う。そこで、テスト機を使ってもらい、得た評価をすぐさま企画・開発にフィードバックする。そして、汎用性の高い標準品としても販売できるように改良、開発する。その結果、幅広い業界でキーエンスの製品が使われるようになる。
メーカーにとって、FAの休日は許されない。キーエンスは、個客との密なコミュニケーションを通して、業界の市場動向をいち早くキャッチし、正確な需要予測を行い見込み生産する。そうすることで、オーダーのあった商品をその日のうちに届けられる「全世界当日出荷」を可能にした。こうして、生産現場で部品待ちの不安を解消している。
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