"離婚"寸前の「米欧同盟」に"復縁"の道はあるのか かつての蜜月がこじれにこじれた根本原因

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インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(現インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ)のコラムニストだった故ウィリアム・ファフ氏は「アメリカ人の多くは海外のことにまったくと言っていいほど関心がなく、無知なことが残念だ」と語っている。

ゼレンスキー氏が「あなたはウクライナを訪れたこともないのに、どうしてウクライナの外交が足らないと言えるのか」とヴァンス氏に迫ったのに対して、「記者団の前で私に恥をかかせた。無礼だ。アメリカへの感謝がない」と激怒したのも、ヴァンス氏のウクライナへの知識は非常に限定的だったからだ。

極端な言い方をすれば、世界は固唾をのんでウクライナ戦争を見守っているが、アメリカ国民のウクライナへの関心は驚くほど薄い。世界はトランプ氏がアメリカによる軍事支援の変化や見返りを要求していることに驚いているが、会談直後のエマーソン大学の世論調査ではトランプ氏の紛争への取り組み方についてアメリカ国民の50%以上が支持した。

確かに大統領の前で腕組みをするというマナー違反を犯したゼレンスキー氏は、立場の優劣にこだわるアメリカ人の性格を理解していなかったように映る。一方で、アメリカ人が中・東欧人のメンタリティーを理解していなかったことも明らか(理解する気がないのかもしれないが……)。20世紀の独ソ戦争で国土に3000万人の遺体が埋まるという苦難の歴史を持つウクライナ人の保身への意識は、欧州に住む人には有名だ。

アメリカ側は、ゼレンスキー氏がウクライナの存亡を懸けた戦いをしていることへの理解が乏しい。トランプ氏は自分の手でウクライナに停戦をもたらすという手柄にこだわる一方、ウクライナの安全を保障すると言及したことはない。これは、ロシアを熟知する欧州首脳も強く懸念している点だ。

トランプ氏を翻意させるための方策

それでは、こじれにこじれている欧米の関係が修復に向かうためには何が必要か。

なんでもディール(取引)でアメリカに利益をもたらせばいいというトランプ氏の政治スタイルを考えると、一部の欧州外交専門家の中からは、軍事装備品を自前で準備する時間のない欧州が、アメリカからミサイルや防空システムなどの装備品を大量購入すればいいという声が上がっている。

アメリカには、だましだまされた長い歴史を持つ欧州に対する疑心暗鬼が存在する。そのため、軍備品を大量購入するというわかりやすいディールは信用されやすい。とくに「ウクライナは自由と民主主義を守るための最前線」という大義名分が通じにくいトランプ政権に対しては金をチラつかせることが効果的だ。

米欧同盟を復縁させるために何より肝要なのは、アメリカ依存を脱却し、アメリカの負担を減らすと同時に、経済的な絆を深めること。そのうえで、日本も同様だが、忍耐と礼儀を貫くことで国家間の信頼関係の基礎を構築し、第2次大戦後の古い外交常識から脱却し、対立を避け、外交力を磨いていく努力が必要だろう。

安部 雅延 国際ジャーナリスト(フランス在住)

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あべ まさのぶ / Masanobu Abe

パリを拠点にする国際ジャーナリスト。取材国は30か国を超える。日本で編集者、記者を経て渡仏。創立時の仏レンヌ大学大学院日仏経営センター顧問・講師。レンヌ国際ビジネススクールの講師を長年務め、異文化理解を講じる。日産、NECなど日系200社以上でグローバル人材育成を担当。

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